ビジネスに必要なもの

ビジネスに必要なものとは、「ヒト、モノ、カネ、情報」のこと。

それ自体が目的とは限らないが、無くてはならないものだ。

それは、人が生きるために必要なもの、つまり「呼吸、睡眠、食事、排せつ」を思い起こせばわかる。

普通の人なら決してこれらのために生きているわけではないが、たとえ一つでもできなくなれば生きてはいけない。

だが、ここに挙げた4つの必要は、地球上で暮らすからできるのであり、地球外で生きていけそうな場所は見当たらない。

つまり、呼吸のためには空気、睡眠のためには静寂、食事のためには食物、排せつのためには安全な場所が必要だ。

こうして考えると、ビジネスについても同じことが言える。

ビジネスに必要な「ヒト、モノ、カネ、情報」を手に入れるためには、どうすればいいのかが分からなければ、ビジネスに着手することすらできなくなる。

だが、人間は今地球上だけにとどまらず、地中や宇宙へと活動範囲を広げている。

宇宙服や酸素ボンベそして電子機器などを駆使して、自分に必要な環境をコンパクトにまとめ、どこででも生きていけるようになりつつある。

たとえ必要なものがそろっていなくても、自分で生みだしたり調達できれば、新たなビジネスを生み出すことができるはず。

先週、第1期(全4回)を終了した「地域起業の始め方」というオンラインセミナーは、まさにこの課題に挑むチャレンジだった。

ここで言う「地域」とは、「生きるための宇宙服」のような「小さな社会」のこと。

大きな社会の課題を解決する会社を作るのでなく、課題そのものを生み出さない小さな社会=地域を作ろうという提案だ。

課題解決という「終わり」でなく、課題を生まないという「永続」を目指すこのビジネスは、いかなる失敗や不足も乗り越えなければ実現しない。

このセミナーでは、「ヒト、モノ、カネ、情報」を「お金(カネ)、仲間(ヒト)、ノウハウ(モノ、情報)」の3つに分け、目的である地域が実現した時、ヒト、カネ、ノウハウ(モノ、情報)はどのようなものなのかを考えて見た。

まず、会社におけるカネ(お金)は価値の尺度、交換の媒介、貯蓄の手段などの役割を担っている。

カネの出所は負債(他人から借りたカネ)と資本(あらかじめ自分のカネ)に分類できるが、いずれにせよ日銀や政府が発行した「円」というカネを借りて使っている。

だが、新たに作る地域が目指すのは、カネを生み出すことだ。

そこでこのセミナーでは、地域が生み出す価値や地域で利用できるサービスと交換できるギフト券を発行し、地域独自のカネを作り出す方法について考えた。・

次に、会社におけるヒト(人)は、人材のことで、雇用する労働者や取引相手の顧客を指す。

もちろん全ての人が金銭関係でつながるわけではないが、損得勘定でつながる関係者たちだ。

だが、新たに作る地域が目指すのは、関係者でなく当事者を生み出すことだ。

そこでこのセミナーでは、地域を担う仲間を新しい家族として組織化し、家族が継承すべき願い=遺言の作り方について考えた。

そして残りの資源、会社におけるモノと情報は、言い換えるとハードとソフトのことであり、ビジネスが生み出す価値そのものの素材を指す。

この素材を使って社会の課題を解決するのが会社の目的だとすれば、そのような課題を生み出さないようになることが地域の目的だ。

今回のセミナーでは、これを「ノウハウ」と呼んでいるが、解決すべき課題を生み続けるのでなく、課題自体を生まないノウハウこそ地域が求める目的のはず。

そこでこのセミナーでは、課題を解決し、その後も継続し続ける事例を参照しながら、永続するノウハウについて考えた。

ビジネスとは営利や非営利を問わず、また組織形態を問わず、その事業目的を実現するための活動の総体をいう。したがって僕はこれまで、「事業目的こそがビジネスをビジネス足らしめるものだ」と確信し、そのように説いてきた。

だが、僕が目的を優先する理由はもう一つあり、それは、目的をビジネスの終わりとしないこと。

ビジネスが課題の解決を目指すということは、課題を解決できるビジネスを生み出すことだけでなく、課題を生まない社会を作ることだと僕は考える。

つまり、犯罪を無くすための警察が要らない社会を目指すのでなく、警察が犯罪を生まない仕組みを担う社会を目指そうという意味だ。

世界を一気に変えるのでなく、少しずつ、小さな地域から変えていきたい。