敵と味方

まず朗報から。

先日のブログでご紹介した「前略 土地所有者様」と題したラブコールがきっかけで、土地所有者との「意気投合」が実現した。

その証に撮らせていただいた記念写真は、左からK君(仲間)、Sさん(オーナー)、僕、T君(仲間)だが、こちらのご紹介はまたの機会とし、今日伝えたいのは別のこと。

今回のラブコールは、あるwebサイトに公開された「Sさん所有の古民家に対する購入者募集」への申し込みだった。

なのでまず、こちらの申し入れに対し、所有者Sさんから「現地でお目にかかりたい」とご連絡をいただいた時、僕らは小躍りして喜んだ。

そして昨日、現地でお目にかかったSさんから、「あなたのサイトに興味を持ち、三日くらい読み込んだが理解しきれないので、是非ともお目にかかりたかった」と言われた時、僕は天にも昇る思いだった。

だが、更に嬉しかったのは、Sさんが自身の思いを率直に聞かせて下さったこと。

10月末に締め切られた、このたった1か月間の募集に対し、なんと430件の応募が有ったという。

このことだけでも、この物件の魅力というか、可能性を示しているが、応募した僕にとっては悪い知らせだった。

もしも購入者として一人が選ばれるのだとしたら、この応募は430倍の狭き門であり、採用されるのは至難の業だ。

また、たとえ複数の候補者が選定され、そこから二次審査的な段階に進むなら、そこに残るのは精鋭の強敵だらけで、またしても難関だ。

今回の訪問日時を調整する過程で、Sさんが多くの方たちを順次招いていることは明白だ。

1次選考に選ばれたことは嬉しいことだが、その後の競争にどう挑むのかをイメージせずにSさんに会う訳にはいかないだろう。

だが、そんな迷いは一瞬のことで、僕はすぐに我に返った。

そもそも僕らの提案は、所有者が独自の土地活用をすべきであり、そのための仲間づくりをすることだ。

財産権や所有権の不可侵は確かに大切だが、孤立や断絶を招き、地域社会の存続を脅かしている。

土地や建物を独り占めするのでなく、より多くの人たちと分かち合うことこそが、存続と繁栄をもたらすはずだ。

多くの人は自分の財産や権利を他人と分かち合おうとせず、プライバシーとセキュリティの鎧を脱ごうとしない。

僕らが仲間との土地共有にこだわるのは、それを誰もやらないからにすぎず、比較できる類似案があるのなら、もしろ嬉しいし、仲間になりたいものだ。

そんな開き直りの気分に対し、「430件も問い合わせをいただき、その大部分から真摯な熱意や意欲を感じることができて、僕は感激しています。」とSさんが語るのを聞いて、僕の心は一気に10ページくらいページをめくられたような気分になった。

430の申し込みから一つを選ぶなんてできやしない。

いやむしろ、一つに絞るのではなくて、いかに多くの申し出を受け容れられるかが、大事なんじゃないか。

そこで僕は即答した。

「おっしゃる通り、この430はむしろ宝ですね。Sさんの思いを旗印にしてプロジェクトを立ち上げて、一緒にこの土地を活用する仲間として誘いましょう。こちらが選別するのでなく、自ら仲間になってくれる人たちが残ればいいと思います!」と。

僕たちとSさんは、この瞬間意気投合した。

430の応募者が、選別すべき候補者から、賛同してくれる候補者に変わった瞬間だ。

僕は自分を含む430人の応募者に伝えたい。

僕たちは、競い合う敵同士でなく、協力し合う味方同志になったんだと。