地主の仲間

先日、居住者のいない古民家と古家、そして一人暮らしと二人暮らしの計4軒の住宅が建っている約280坪の土地で行うプロジェクトの作戦会議を行った。
このプロジェクトは上記の内の2軒を活用するのが目的で、古民家を交流・レンタルスペースに、古屋をシェアハウスにしたいというオーナーの希望から始まった。
敷地の北端にある古民家のリフォームは昨年完成しており、すでに毎月1万円程度の収入が発生しているが、この度南端で取得した古家は借地人が退去したばかりで、まずはシェアハウスとしての運営を検討してみようという段階だ。
この2軒の空き家に挟まれた部分に、母屋と離れ的な2軒の居宅が有り、全体を開発して収益化するのでなく、まずは空き家部分を活用して、暮らしの質(QOL)を向上させたいというオーナーの意向に僕は飛びついた。
このように、「収益化=営利」の前に「目的=夢」をきちんと描き、費用をかけずに試行することこそが、僕が目指す「みんなで地主」への第一歩だから。

古家をいきなりリノベせず、現状のままでオーナーと夢を共有する仲間集めから着手するのも、そのためだ。
まずは居室と共用部分を区分けして、居室部分各室の広さと数から入居者数を想定し、建物全体の面積をその人数で除算して、一人当たりの面積から相場賃料を俯瞰する。
類似物件を参照しながら基本賃料を設定すれば、ほぼ収入見込みが確定するので、次に支出の計算に取り掛かる。
まず、光熱費や消耗品などの生活実費は、基本賃料に加算して清算することにして、オーナーがイメージする住宅の基本性能について検討する。
例えば、壁や天井は入居者の自由に任せても良いが、床は安全と衛生を考慮して現状を直したいとか。
キッチンや浴室トイレなどの水回りや、換気空調設備についてはどこまでオーナー負担とするとか。
家具など什器備品に関する取扱いなど、オーナーの夢や希望を細部に盛り込むことが大切なことだと考える。そんな方針を伝えながら、話は次第に核心部分に向かっていく。

この議論の核心とは、「オーナーがどこまで仲間を受け入れるか」だと僕は考える。
先ほど述べた、QOL=Quality of life(クオリティ オブ ライフ)は「生活の質」「生命の質」などと訳されるが、シャアハウスを希望するオーナーにとって、孤立防止と交流促進による活力の維持がその中心にありそうだ。
ということは、シェアハウスのメンバーは、古家とその庭を共有するだけでなく、北端の古民家もその共有範囲に含めることが出来そうだ。
そして将来、シェアメンバーとオーナー家族が緩やかにつながれば、オーナーの居宅の一部も共有可能だし、最終的には4軒すべての家が共有対象の施設となり、280坪の土地に4軒の家が並ぶ「小さな村」が誕生する。
そんな話をし始めると、「松村さんのことだから、きっとそう言い出すだろうと思ってました」とオーナーは苦笑い。
つまり、僕が呼ばれたのは「この話」をするためだし、僕はその役目を果たしただけ。
これで、話は一気にアクセルを踏み込めることになる。

そこでまず僕が切り出したのは、この事業を「古家の事業化」に留めず、「土地全体の事業化」にすることだった。
事業範囲を土地全体にすることにより、一部分からの収益も土地全体が生む収益となり、土地全体の出費を経費化できるようになる。
例えば、これまで土地だけで約100万円/年の固都税(固定資産税+都市計画税)が課税され、当然のごとく税引き後の家計から賄ってきたのだが、今回土地全体を事業用地とみなせば、固都税だけでなく、償却費や火災保険も経費控除できる。
経費控除とは、その支払いを逃れるのでなく、その支払いをきちんと収入から差し引くこと。
税引き後(所得税を払った後)の持ち金から税金を支払うのは、所得税と2重で払うことを意味している。
僕はこれを許さず無駄な2重払いをやめた分を、自分たちの力で素敵な社会を作る費用に回したい。
シェアメンバーという村の住民からは、世間相場の家賃をもらうが、この村づくり(小さな国づくり)を手伝う人には報酬を支払いたい。

話はまだまだ続くけど、今日はこの辺で。
こうして、土地を使って夢を叶えたいと考えるオーナーを、僕は「地主」と呼んでいる。
その夢を共有し、叶える努力に参加する人を、「地主の仲間」と呼ぶことにしたい。
「地主」とは、土地を「不労所得を生む財産」にするのでなく、「仕事を生み出す資源」として利活用する人のこと。
「不労所得」を「相続」するなら税金がかかるけど、「仕事」を「継承」するなら税金はかからない。
へっぽこな政府に2重の税金を払いたくないのは、楽をしたいからでなく、自分たちで社会を作りたいからだ。
次回、税金の2重払いについて詳しく話したい。