地域と資源

次回のまつむら塾に向けて準備をする中、またまた面白くなって脱線中。
テーマは「地域と資源」なのだが、僕にとって、「資源」という言葉は格別な意味を持つ。
「資源」という言葉は英語の「resource」に対する中国語の訳語のようなので、「resource」の基本的な意味を確認すると「役に立つ価値あるもの」を意味するまさに漠然とした概念だ。
そもそも、僕がこの言葉と向き合い始めたのは、初めて「ビジネス」を辞書で調べた時。
広義の意味で、「ビジネスは事業目的実現のために人・物・金・情報などの諸資源を活用して行う活動全体。」という説明から「金は目的でなく資源である」と気がついた。
もちろんビジネスの目的に制約はなく、お金を目的にしても構わないのだが、それは営利ビジネスと呼ばれる一部に過ぎず、非営利や公益などもっとビジネスは様々だ。
つまり、我々にとってお金は「欲しい」以前に「必要」であり、そのようなモノ全体を資源と呼ぶ。

こうして辿り着いた「資源」という概念には、およそあらゆるものが該当しそうだが、「ビジネスにおける資源」には「目的実現」という明確な条件が付随するように、この曖昧な概念は一歩絞り込むだけで明確に機能する。
この気づきは「土地資源」という更なる概念を生み出した。
土地は元来資源だったはずなのに、いつしか目的化してしまい、その放置が許容されるようになってしまった。
「経済学における資源」は、土地、資本、労働の3つに分けられる。
・土地:生産過程で使用される土地・土壌・鉱物といった財のこと。
・労働:技術力・生産力を持つ労働者という財のこと。
・資本:労働力を投入して形成された財のこと。
つまり、ヒトとカネ以外の全ての資源は土地に帰属するという考え方だ。

ところが現在、多くの土地や建物が必要とされず、放置されているのだが、それ自体はまるで問題視されていない。
むしろ、土地が売れず、所有者の負担が増えることが問題視されている。
何かをするために使う土地が資源であり、売るための土地は換金の目的に過ぎない。
こうして土地が資源でなくなることを、僕は「土地資源の喪失」と名付けた。
そして、この問題に取り組む仲間たちと「日本土地資源協会」を設立し、その担い手を「地主」と定義して「地主の学校」を出版した。
このように、「ビジネスと資源」から「目的実現のために必要なモノ」だと気づき、「使われなくなった土地」から、資源の喪失に気付いた僕が求めるのは、「土地を使えるようにすること」だ。
そこで、「地域における資源」を、「有るかどうか」と「必要かどうか」で論じたいと考えた。

そもそもすべての資源は地球から無償で入手でき、金もダイヤも石油もマグロも、誰も地球に代金を支払わない。
だが、実際に無償で済むのは自力で入手する時だけで、多くの場合誰かに費用を請求される。
多くの場合と言ったのは、そこに例外があるからだ。
例えば、太陽の光や熱、空から降り注ぐ雨や、呼吸に必要な空気など、完全に無償だが果たしてこれらを資源と呼ぶだろうか。
また現代では、元来無償だったのに、有償で取引されるようになったものを資源と呼び、逆に有償の資源が無償になった時を「ゴミ」と呼ぶのも興味深い。
太陽の光や空気など、我々が生きていくのに不可欠な資源に課金しないのは、それらを占有できないからでもあり、資源を支配し、他者の使用を禁ずることができればその使用に対して課金できる。
この占有支配を「所有」と言い、「使用」を禁ずる力を持つ。
「資源」が「役に立つもの」、「使用」が「役立てること」であれば、「所有」は「資源の支配=使用の禁止」を意味している。

改めて問い直そう、「地域にとっての資源」とは何だろう。
確かに「何かをするために有益なモノ」という説明は間違いではないと思うが、それはビジネスにとっての資源であって、地域にとっての資源とは思えない。
なぜなら、地域は「何かをするため」にあるのではなく、場所や範囲を示す概念だ。
したがって、地域と資源の関係は、その資源が有益かどうかでなく、有るか無いかだと思う。
更に考えれば、たとえ有っても使えなければ役に立たないし、たとえ使えても法外な対価を要求されたら使えない。
つまり、地域と資源の関係は、その地域において自由に使えるかどうかということになり、その人間的な側面は、使用を許す側と許される側の関係となるだろう。

ということで、「まつむら塾B32・地域と資源」の概要は、次のようにまとまった。
「地域における資源」とは、「存否(有るかどうか)」と「要否(必要かどうか)」。
資源と人間の関係は、「(有るから)所有」と「使用(に必要)」。
資源と空間の関係は、「(有るのを)公開」と「(必要だから)開放」。
資源と時間の関係は、「(有るから)貸す」と「(必要だから)借りる」。
先週のブログで「市場」を「売りと買い」で説明したのに対し、今回「資源」の説明の中に「貸すと借りる」が出現するのも興味深い。
以上、今日も頭の中から実況中継だ。