ビジネス町内会(前篇)

保有に取り組むうちに、社団法人による所有に辿り着いた。
だが、これは永続可能な仕組みを作ったにすぎず、実際にこの仕組みを永続的に運用しなければ意味が無い。
確かに、自分が死んだ後も誰かが引き継いでくれれば永続するはずだが、それを確認する術がない。
そこでふと、先日お話した中村哲さんのやり方を思い出した。
彼は、これから起きる天変地異に備えるため、これまで幾多の天変地異を乗り越えてきた過去を参照した。
そこで僕もさっそく真似をしてみようと思う。
僕の目指す「永続的コミュニティの仕組み」とは、どんな変遷を経たのだろう。

永い歴史でまず思い出すのは、古い神社や仏閣だ。
有名な伊勢神宮や法隆寺だけでなく、先日ご開帳で訪れた長野の善光寺には日本最古と言われる仏像が安置されているし、昨年訪れた壱岐や対馬には1000年をはるかに超える古い神社が至る所に点在する。
そして現在、その多くが様々な変遷を経た末に衰退し、ひっそりと佇んでいるが、それらを支えるコミュニティが地域に根差して存続している。
僕がサポートする松戸市紙敷の町会は、地元の春日神社境内に集会所を建設しようとしているし、八島花文化財団のコアメンバーたちは地元神社の例大祭で盛り上がっている。
かつて日本を統治していた天皇家は、永い武士の傀儡(かいらい)時代を経て象徴天皇となった今でも、各種の神事を司る神道の本家的存在として存続するが、このユニークな宗教文化は、現代日本を代表する観光資源と言えるだろう。

全国各地に存在するものとしては、町内会や商店街も挙げられる。
現在の両者は、敗戦後のGHQが地域社会を民主的に管理するために許可した仕組みだが、その歴史は意外と古い。
町内会等の原型をどこに求めるのかについては、wikiに記述がある。
町内会等の祖型は近世の五人組であり、それが近代に入って明瞭な形をとって現れたとされている。
また、第二次世界大戦後のGHQの研究では、町内組織の起源が大化の改新時における五人組隣保制度の導入にまで遡って検討されている。
同様に、商店街の起源も古く、安土桃山時代(戦国時代 後期)各地の戦国大名などによる、支配地の市場で行われた経済政策であった楽市・楽座まで遡ることができる。
他には江戸時代に街道沿いに発達した宿場町や寺院などが集まる門前町、現近代以前の港、近現代の鉄道駅周辺など、いずれも政策的もしくは自然発生的に生まれた商業集積地を指す。

日本の地域社会は、多くの戦乱や天変地異による破壊、そして統治者の交代などによる権力構造の変化を乗り越えて、全体としては緩やかな成長を続けてきた。
だが、明治維新により「官と民」の役割が分化され、この成長速度は一気に加速される。
社会を担う「官」は、明治22年自給自足していた7万を超える集落を町村大合併で12,000程度の自治体数に統合し、公的業務の合理化に着手する。
一方で、経済を担う「民」に対しては年貢制を廃止し、地租(後の固定資産税)改正により貨幣経済を導入し、「全ての価値の価格化」が始まった。
これは見事にし、列強諸国の仲間入りを果たした日本は、国土拡大の侵略に邁進した。
そして「一億玉砕」を合言葉に家族や仲間を殺しまくった末の1945年、焦土と化した国土を守るため「無条件降伏による存続」の道を選んだ。

こうして、GHQの監視の下、戦後の復興が始まった。
先述したとおり、平和な民主社会を築くために採用された政策が、町内会や商店街などの地域コミュニティ作りだった。
その後の現在に至る経緯については、また別の機会に譲り、ここでは総括とその先の話を急ぎたい。
地域コミュニティには、2つの側面がある。
それは、統治者が地域社会を管理する手法である一方で、地域社会自身が永続するために目指すべき姿であることだ。
町内会の原型である五人組は協力を強いる監視体制だったため、GHQはその採用に難色を示したが、バングラデシュのグラミン銀行が、貧しい女性労働者の5人組に対して融資するマイクロファイナンスの成功によってノーベル平和賞を受賞したように、相互互助のコミュニティの必要性を優先したという。
商店街は、無法地帯の闇市に秩序をもたらすため、「商店を組織化すれば助成する」という名目で、街路灯の維持建設費を受益者にも負担させるというアイデアだった。

さて、ここからが本題だ。
永続する地域コミュニティのつくり方を知りたくて、神社仏閣、町内会、そして商店街の歴史をざっくり振り返った。
いずれも、ごく一部の成功事例を除けば、惨憺たる現状だ。
だが、それでもなお存続し、そこに「頼るべき何か」を模索する人が少なからずいることも確かなこと。
だったら、僕はこれらの再生について、もう少し真剣に考える価値があると思う。
そのヒントは、これまでの歴史の中にたくさんある。
つまり、この仕組みの「過去の成功を懐かしみ再現する」のでなく、「今そしてこれから必要なことを取り扱う」ことではないか。
そこで僕の提案は、ビジネスの近所づきあいを推進する「ビジネス町内会」。
長くなったので今日はここまで、続きは後編で!