松村、就活始めたってよ

ひょんなきっかけから、就職活動を始めてしまった。
実は、現在に至るまで僕はまともに就活をしたことがない。
そもそも、小6の時に父が仲人さんから麻布中学を進められたせいで、いきなり私立受験を命じられ、高3になると父から「日大の建築学科に話を付けてある」などと言われたので、この呪縛から逃れる一心で大学受験は東大しかしていない。
大学の同級生はほとんどが大学院を受験したが、僕はこれ以上学校に行きたくなかったので、槇文彦先生に「東大生のいない忙しい事務所を紹介してください」とお願いし、地獄のように忙しい設計事務所に入れてもらった。

だが、4年程務めるうちに建築家を目指して仲間たちとしのぎを削るより、むしろ施工者になってみんなと一緒に仕事をしたくなり、結局一番行きたくなかった父の建設会社にコネ入社した。
ところが、42才の厄年でこの会社が倒産し、やってることはほとんど変わらないのに代表取締役からただの松村さんに早変わり。
それからというものは、株式会社を4つ、NPOと一般社団法人を一つずつ設立し、自分で自分に給与を支払ってきた。
もちろん仕事をとったり参加する時には必ず「プロフィール」を求められたが、いわゆる「履歴書」というものを書いた記憶がない。
そんな中、先日A県H市企画部長のYさんから、こんなメールが届いた。

国の地域活性化伝道師の情報を拝見し、メールをさせていただきました。
A県H市では、中心市街地の活性化が長年の課題となっておりましたが、この度、市長が民間の方の知恵を活かしてチャレンジしていこうという方針を打ち出したことから、今回の募集に至ったものです。
すでに募集は開始しており、何人かから応募もいただいているところですが、松村様におかれましても地域活性化伝道師としての知見をもってぜひお力添えを検討いただけないかと思い、メールさせていただきました。

・・これに対する僕の返信・・
Yさん、この度はご連絡いただき、誠にありがとうございます。
さて、お誘いの件ですが、私の得意というか、やりたい分野ではございません。
私は、地域社会が担い手不在により衰退し滅亡していくことを問題視していて、地域の存続や発展を目指し助け合うコミュニティの生成に取り組んでおります。(拙著:地主の学校 参照)
もちろんH市の取組の根底には、上記の課題意識が無いはずはありませんが、議会やマスコミが、目に見える成果を求めるあまり、土地建物を所有する当事者たちまでが、目先の成功を求めビジョンを見失っています。
とはいえ、せっかくのお誘いですので、自分のやりたいことを盛り込んで応募させていただきます。
どうぞ厳しくご審査ください。
末尾ながら、K市長様にも、よろしくお伝えくださいませ。

・・これに対するYさんからの返信・・
この度はご応募ありがとうございます。
地域活性化伝道師には、大変多くの方が登録されており、その中から松村様にご案内を差し上げたのは、松村様の地域活性化伝道師のプロフィールシートを拝見したのがきっかけです。
本市の中心市街地では、区画整理を行ったにもかからず、駐車場や空き地などの低利用地が目立っています。(〇〇駅の東側地域が中心市街地ですので、Google Street Viewでご覧いただくとわかると思います。)
土地所有者があまりに”守り”に入りすぎていると感じています。
松村様のプロフィールシートに「土地所有者が担わなければ地域社会は成立しません。」とあり、土地所有者をその気にさせるきっかけから活性化が図れるのではないかと思ったからです。
選考委員は、市長はじめ民間の方も入りますので、採用されるかどうかはお約束できませんが、まずはご応募いただきありがとうございました。

ちなみに、この公募は「エン・ジャパン」という求人サイトのプロジェクトとして運営されている。
そこで早速求人サイトからエントリーしていたら、結局まんまと求人サイトに登録することになっちゃった。
さてその後、このサイトから怪しいメールが届き始めたことを付け加えておく。
65才のおじさんでも、応募可能な求人情報が、毎日送られてくるという訳だ。
最初にも述べたとおり、僕は就活というものをやったことが無いので、このメールを見るのがちょっとした楽しみになった。
もちろん応募したところで、そう簡単に受かるはずもないだろう。
だが、昨日来たのは・・・
【I県、公立10校で校長公募。着任先は8校の中高一貫校と、初の「IT」「科学」専門高校。】
・・・とのことだ。
さあどうする・・・もちろん後先何も考えず、さっさとエントリー完了だ。
65才おじさんの、就活珍道中は、一体どうなることだろう。