夕張市長への手紙2

夕張市長様
平成19年1月6日 松村拓也

 本日は、お招きいただきまことにありがとうございます。市長様にお目にかかるに当たり、まず始めに今回の問題を私なりに整理してみましたのでお聞き下さい。

1. 地方財政再建促進特別措置法と標準財政規模・・・地方自治のあるべき姿
行政の破綻とは、企業のそれとはまったく違うものです。企業の破綻とはすなわち、「債権放棄」を意味しますが、行政は国家体制がその保証をしている限り「債権放棄」を行いません。あくまで適正規模の財政での運営を「強制する」ということだと理解しています。適正規模を著しく逸脱(20%)した場合にこれが適用されるというこの法律の主旨は、至極もっともなものに思えます。大多数の自治体が程度の違いはあっても適正規模を逸脱し、巡り巡って国民への負担となっている現状を考えると、この破綻を契機に今こそ夕張市が率先して「適正規模の地方自治を模索する」べきだと考えます。

2. 指定財政再建団体申請の状況と必要事項・・・夕張市の取るべき態度
ところが、その具体的な方策について、国も道も相談に乗るどころか夕張市を突き放しているのが実情です。そんなことをして、誰が得をするのでしょうか。夕張市の自力再建を願う親心だとでも言うのでしょうか。それは有り得ません。なぜなら国も道も同様の問題を抱えているからです。この問題は、そう簡単に解決できては困るのです。「仕方がないから、さらに借金をする。」という結論に導くための大芝居に他なりません。昨今の高橋知事も、先日の菅総務大臣も、夕張市を追い詰めておいて悲鳴を上げる市民の声を拾い上げ、「市民のためにやむを得ず支援する」と言わんばかりです。こんな猿芝居を続けさせてはいけません。夕張市は、断固たる態度で行政サービスの圧縮を断行すべきだと思います。

3. 指定財政再建団体のやるべきこと・・・夕張市のやるべきこと
今地方自治は、その過剰なサービスをやめ、少なくとも「適正規模」と言われる範囲に縮小しなければいけません。肥大した行政の恩恵を受けているのは、決して当局の関係者だけではありません。公共サービスがないと生きていけない社会など、そもそも間違っています。公共の支援や補助を当て込んだぶら下がりビジネスやぶら下がり市民を一度は振り落とす必要があると思います。そのとき初めて、人々は知恵を出す必要に迫られます。助け合いながらも自力で生きていく地域社会を作るには、またとないチャンスになるはずです。「官民協働」がかけ声倒れになっているのは、その必要性がないからです。「地域の自立」をきちんと宣言すれば、全国から知恵が集まってくるに違いありません。

4. 夕張市の収支・・・損益計算書
地域が自立するためには、自治体の収支も採算性を持って考える必要があります。歳入の中に借入れがある「歳出優先主義」から脱却し、「歳入の範囲内で何とかする」という発想に切り替えなければなりません。アメリカやオーストラリアでは、市町村は住民投票で発足し、市長も議員もボランティアだそうですが、「行政サービスは本当に必要か」という議論ですら避けるべきではないと思います。

5. 債務(地方債)の額・・・貸借対照表
多額の債務があるとのことですが、債権の方はどうなっているのでしょうか。貸借対照表を作成し、返済すべき債務額は国という金融機関ではなく、真の債権者である国民に問うべきだと思います。どのような過酷な返済にも挑まなければなりませんが、同じことが日本政府にも、北海道にもそして全国の自治体にも求められていることを、今こそ明らかにすべきです。

先ほど「破綻」について触れましたが、このことについてもう少し考察したいと思います。すべての問題が解決できるのであれば、それを「破綻」と呼ぶ必要はありません。ですから、「破綻」とは、「何かが解決しないこと」とも言えるのです。今夕張市が直面する課題は、「どのように破綻を防ぐか」ではなく、「どのように破綻すればよいのか」だと言うことを忘れてはいけません。しかしまた、「破綻」とは、「どうなっても構わないこと」とは違います。「破綻」によって問題が解消し、再出発が可能とならなければ「破綻の価値」はありません。ですから、どうせ破綻するなら、「生き返るための破綻」を模索しなければいけません。

「夕張問題を解決する」ということは、「2度とこの問題を起こさない」ということになります。ですから、今大切なことは「夕張の現状を招いた原因を突き止め排除すること」を、どんな犠牲を払ってでも最優先することです。この課題に取組むには、「2度と破綻しない夕張」を具体的にイメージし、「ビジョン」として夕張市民ができるかどうかにかかっています。ですから、市長のリーダーシップは、この1点に集中しても構いません。このビジョンこそ、今日本国民が求めているものであり、それはここでなければ作り出せないと確信したからこそ、私はここにやってきました。

そのために必要なことは、破綻しない前提条件を早急に作り上げることです。私は自分の会社を再建するとき、これを「絶対に借金しないこと」とし、徹底しました。夕張で言えば、「幾ら以内で何を実現しなければならないか」という「究極の行政サービス」とでも申しましょうか。方法論は後回しにして、「目的」をはっきりさせる必要があります。なぜなら、目的がはっきりして初めて、「手段を選ばず自由に発想し、挑戦すること」ができるんです。

ここで大切なのが「自由」ということ。制約だらけでは、何もできません。今の日本が行き詰っているのも、結局はこの「自由」がすべての面で失われているからに他なりません。自由は奪われるだけでなく、諦められ、忘れられてもいます。そして法律を破壊する自由が失われ、捻じ曲げる自由が横行しています。この制約を取り除いてくれるのが「破綻」です。「破綻」とは秩序の崩壊した無法状態を意味します。ですから、今一番変えなければならない部分を「破綻させる」のです。私の場合は、金融機関との関係に破綻の中心を置き、自ら「借金できなくする」という道を選びました。夕張市が破綻させるべきは何か?、誰か?という問題は、こうした観点から解かれるべきだと思います。

今わが国の抱えている問題はすでに制度上の問題を超え、構造的問題も超え、人間的な問題になりつつあります。先ほど「自由」は諦められ、忘れられたと申しましたが、「改革」も同様です。は幼稚なゲームと化し、ビジネスも目先の利ざやを追い求める低レベルの争いになりつつあります。今わが国で破綻が必要なのは、「制度」でもなく、「経済」でもなく、人々の暮らしや生き方そのものではないでしょうか。暇と楽を追求し、保護や支援をあてにするような生き方を今破綻させなければ、国民は物乞い化し、福祉のために若者をこき使うお先真っ暗な国になるしかありません。「去るも地獄、残るも地獄」などという話を聞きますが、「地獄をいかにして楽しく暮らすか」という人生の原点を忘れた救いようのない声に聞こえてなりません。

乱暴なことばかり申し上げましたが、どうかお許し下さい。私はただ、「問題を解決する」ということに真剣なだけです。それにはまず、「何が問題か」をはっきりすること。そうすれば、幾らでも解決策は生れてきます。どうか私の力をご活用いただけますよう、衷心よりお願い申し上げます。

以上

追伸

この時の滞在で、僕は地元の若者たちと議論を重ねて「ばりゆうPJT」を作成し、市役所で発表した。
この提案は、残念ながら採用されなかったが、当時の議論メンバーの中に、現夕張市長が含まれていることを知り、嬉しくなった。