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何かをしたいのに、立ちはだかる課題があり、それを乗り越えられないことがある。
違う道を探そうにも、疑問に取り囲まれ、八方ふさがりになることもある。
こんな時どうすればいいのか、途方に暮れる人は、一度僕を訪ねて欲しい。
僕には、その道を示したり、答えを教えてあげることはできないが、一緒に道を探し、答え探しを手伝うことならできるから。
なぜなら、それこそが僕のやりたいことであり、僕の好きなことだから。
昨日もそんな人が現れて、この話をしたら、少なくとも次回の約束をして笑顔で別れることができた。
そこで今日は、僕のやり方・手伝い方について話しておきたい。

まず初めに、うまくいかなかったり失敗することは、素晴らしいことだと言っておく。
僕は自分のプロフィールに「1999年経営する建設会社の倒産経験で開眼した」と好んで書いている。
もちろん意外な書き出しで、読む人の心を掴みたいという下心も無くはないが、成功した自慢話より、失敗の体験談の方が読み手のためになるからだ。
でも実は、他人を利することにより、困った時に助けてもらうことこそが自分を利することに気付いたのが、僕の倒産経験だ。
資金が無くなり、経営が破たんしていく時、僕は毎日出社して建て主、下請け、銀行、興信所、そして暴力団に至るまで、すべての人と面会した。
それは決して勇気があるからでなく、むしろ逃げたり隠れたりすると何をされるかわからない、心配だから逃げられなかった。
でもその結果、全ての人から叱られたが、全ての人から様々なことを教わった。
素晴らしい先生を探すより、自身が素直な生徒になることで、誰もが先生になってくれることに気が付いた。

やがて、1か月ほどで会社は潰れたが、僕はすぐさま仕事を再開できた。
それは、起業と創業の違いに気が付いて、僕はまず創業から始めることにしたからだ。
創業とは、「初めてやること」で、仕事や会社、お店などを創業することを指す。
自分にとって初めてでも、これまで多くの人がやってきたことだ。
会社を潰したのは僕だけでなく、多くの下請けが経験し、銀行は目撃し、暴力団は関与して、建て主たちだってそれを乗り越え回避している。
僕は会社を潰すプロセスで、潰し方を知ることで潰さないやり方を学ぶことができた。
だったら、たとえ会社が潰れても、仕事を継続すればいい。
そしてその先のことは仕事をしながら考えようと思い立った。

渋谷のど真ん中で、会社が潰れたまま仕事を再開したので、次第に注目されるようになり、新たな受注の話まで舞い込むようになってきた。
だが、全社員を解雇し、下請けの手形や銀行の債務を踏み倒した僕には、様々な制約がのしかかった。
たとえ新たな会社を立ち上げても、僕が経営当事者にはなれず、多くの「できないこと」が山積みとなった。
そこで僕は、これらの「できない」をあえて「やらない」に置き換えて、新たな会社を立ち上げた。
施工以外の営業活動はやらない、施工しやすい条件の良い仕事はやらない、競争の無い予算が潤沢な仕事はやらない。
すると、施工会社を見つけられずに困っていた若手の建築家たちの間で評判となり、多くの引き合いが来て、営業せずとも仕事に困らない会社としてゆっくり成長することができた。
結果的にこれまでにない新しい建築屋を「」することができたわけだ。

このように、「」には教わることができる答えがあり、「」にはそれは無い。
つまり、誰もやっていない(かも知れない)ことをやるのなら、誰もが素人・初心者で先生や教科書がある訳ない。
それどころか、その答えを見つけても「これだ!」と言えるのは、「本人しかいない」かも知れない。
そこで僕にできることは、本人と一緒にその答えを探すこと。
もっと正確に言うと、本人の感じ・考え・やっていることから答えを探すこと。
誰だって、自分の知らないことを「これだ!」と見つけることなどできるはずがない。
本当は、感じたり、知ってたり、やっているのに「気づいていない」もしくは「説明できずにいる」だけだ。
だから僕は、相談者に対し「あなたの考えていることを1枚の紙に全部書いてください」ということにしている。

ちなみに、僕が出版した「地主の学校」は、僕の思いを1枚に書いた目次をそのまま本にしたものだ。
だから、この本を読んで理解できるのは僕しかいないかもしれない。
少なくとも、全部理解できるのは僕しかいないに違いない。
なので、どんどん僕に質問して欲しい。
あなたと話がしたいから、この本を書いたのだから。