今日は、昨夜の「ダーウィンが来た!(NHK)」で紹介された「スネアーズペンギン」から学んだことを話したい。
スネアーズペンギンはニュージーランドのスネアーズ諸島で暮らすペンギンで、別名ハシブトペンギンとも呼ばれる。
全長51~61cm、体重は2~4kg程度とペンギンの中では中ぐらいのサイズで、ニュージーランドの南東にある無人島「スネアーズ諸島」にのみ生息している固有種だ。
絶海の孤島であるスネアーズ諸島には、人類の手つかずの豊かな自然が残っており、1998年に「ニュージーランドの亜南極諸島」として世界遺産に登録され、生き物たちの楽園となっている。
スネアーズ諸島がある南緯50度は「荒れ狂う50度」と言われ、風と海が荒れる難所なので、ペンギンたちは南太平洋から南大西洋まで広大な海域に生息し、繁殖期だけスネアーズ諸島に戻って来る。
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スネアーズ諸島は南極付近の寒流と赤道付近から流れ込む暖流の合流ポイントで、プランクトンが大発生するので魚が豊富。
また、険しい地形と周囲の荒波が人間や肉食動物を遠ざけた。
海藻が生い茂る島の周囲は、全てが断崖急斜面だが、頂部に広がる森林の内部がスネアーズペンギンの集団繁殖地(コロニー)になっている。
ペンギンの足で4時間ほど歩いた開けた場所で、待っているヒナに親鳥たちはエサを与えている。
世界には18種類のペンギンがいるが、木に登るのはスネアーズペンギンだけ。
木登りの訓練を行うことで、雛たちは大雨でコロニーが濡れた状態になったとき、木の上にいることで足を冷やさず命を守ることができる。
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ペンギンたちを雨風から守ってくれるこの森は、島の周辺を流れる暖流のおかげで南極が近いのに木々が生い茂る、世界最南端の森林だ。
そこに育つ木はオレアリアと呼ばれる高さ10メートルのキクの仲間の巨木で、葉にビロード状の繊維がびっしりと生えており、海風の塩分に水分を奪われずに繁茂できている。
それに加え、ペンギンたちがこの森で暮らすことで食べ物やフンが肥料となり、それがオレアリアの成長につながっているとのこと。
また、強風のため地を這うように幹が伸びるため、ペンギンでも登れる緩い傾斜が実現している。
ここを巣立った後、雛たちは大海原を何千キロと泳いで成長し、数年後再びこのスネアーズ島に戻ってくる。この繰り返しが、島の環境を形成し、険しくも安全な楽園が実現した。
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絶海の孤島とペンギンの関係から僕が連想するのは、衰退する地域社会が独自の方法で存続する姿だ。
スネアーズ諸島が賑わうのは、ペンギンたちの繁殖期だけだが、その営みが毎年繰り返されることが今の環境を形成し、ここを拠り所にするスネアーズペンギンという固有種が継続している。
つまり、「スネアーズペンギン」とは、その生体や遺伝子のことでなく、「スネアーズ諸島を拠点とする広大な海域に生きるペンギン」を意味している。
これを日本人に置き換えると「日本列島を拠点に生きる人々」と言えないだろうか。
だとすると、こうした地域に人間が所属する持続的な関係はどのようにしてつくられるのだろう。
まさにスネアーズペンギンが、それを見せてくれている。
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ここからは僕の想像だが、スネアーズ諸島周辺は繁殖期のペンギンたちにとって絶好の餌場だったのだろう。
生まれた雛が自分で捕食できるようになるまでは、親鳥が餌を届けなければならないので、餌場の近くに繁殖地を求めるのは当然だ。
だが同時に、繁殖期は無防備の上、雛はぜい弱なため、安全が確保される場所のみで繁殖は成功し、継続を可能にしたのだろう。
こうした関係が、自然淘汰によってもたらされることを、ダーウィンは進化論で説いているが、「自然淘汰」を辞書で引くと、その語源は「natural selection」で、直訳すれば「自然選択」となる。
日本語の「選択」に対して、英語の「チョイス」と「セレクト」が該当するが、前者は「自由な好みで選ぶ」のに対し、後者は「最適なものを慎重に選ぶ」というニュアンスを持つ。
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ペンギンたちのように、「試しにやってみて成功すればそれを選ぶ」こそが、後者の「セレクト」に当てはまる。
つまり、「成功」とは「選択=淘汰」の基準のこと。
どちらが良いか、正しいかを考えた末に選ぶのでなく、試しにやってみてうまくいけば繰り返し、失敗したらやり方を変えること。
その結果、継続したことを後から振り返り、「選択」もしくは「淘汰」と解釈しているにすぎないと思う。
そもそも答えは多様で一つじゃない。
やるべきことは「選択」でなく「試行と反復」そして、失敗した時の修正だね。