多数決からの脱却

僕は今、いくつかの社団法人設立を手伝っている。

社団法人を作るということは、目的をする人達が作るコミュニティを法律上「ひとりの人間」として生み出すこと。

動物として生殖することで「子供(自然人)」を産むのでなく、人間として合意形成することで「法人」を産むことだ。

そして、自然人と法人の決定的な違いは、その生死に関する扱いだ。

いまのところ、自然人には寿命があるが法人にそれは無く、いつでも殺すことができると同時に、いつまでも生き続けることも可能だ。

それは、自然人の命が寿命を持つ「肉体」に宿っているのに対し、法人の命は「目的」という抽象概念だからだろう。

従って、目的を失った時、法人は死ぬことになる。

さきほど、コミュニティを作るのは「目的を共有する人達」だと論じたが、全てのコミュニティが目的を共有しているわけではない。

コミュニティとは「共有する人達」を意味しているにすぎず、それが目的である必要はない。

例えば、同窓会は出身校が同じ人の集まりであり、出身校を共有するコミュニティと言えるだろう。

だが、その出身校がしない限り、そのコミュニティは寿命を持つことになる。

そこで、その出身校が何を共有するコミュニティなのかを考えてみるといい。

恐らく未来に向けた理念や理想を共有しているに違いない。

つまり、永続するコミュニティになるためには、永続するものを共有する必要がある。

未来とは「未だ来ないこと」であり、これこそが誰もが持つ永続だと僕は思う。

さて、今日の本題はここからだ。

一つの目的(未来)を共有するとは、一体どういうことだろう。

僕が社団法人の設立を手伝うのは、その手続きや許認可の話でなく、法人にする以前の「社団」を作ること。

ここまでの説明が、「社団=目的を共有するコミュニティ」だったのはそのためだ。

社団を法人にする手続きは、2007年までに法整備され、誰にでもできる簡単な手続きになった。

それまで、「天下り先」と揶揄された「社団法人」は廃止され、「一般社団法人」と「公益社団法人」に分類されたのはご存知だと思う。

だが今日は、そもそもの「社団」をどう作るのかという話をしたい。

僕の眼には、多くの社団法人が目的を共有せず、迷走しているように見えるから。

 

まず第一に必要なことは、その目的を正確に説明できること。

多くのコミュニティでこれができずにいるのが現実だ。

「言葉ではうまく説明できないけど、皆さん心で理解しています」という言葉を僕は信じない。

そもそも、「誰も説明できない」ということは「誰も理解していない」危険がある。

養老孟司のバカの壁にもあるように、「分かりました」という言葉は「分からない」を意味している。

実体験に基づく本当の話であれば、他人はむしろ疑問や疑いを持つはずだ。

それができないなら、言い出しっぺや発起人からして誰かの受け売りや真似をしているだけかもしれない。

次に必要なことは、少なくとも二人以上の賛同者を集めること。

二人では、一人が欠けると一人になってしまうので、三人以上いないと社団と言えない。

法律上は二人の社員と一人の監事で成立するが、これは三人を意味している。

そして、この三人が共有したい目的について、理解するために語り合い、完全に意見を一致させること。

「完全に一致する」ということは、「一致できる範囲で文章をまとめる」ことを言う。

このプロセスは、とても大変だが、気づきが多くので強くお勧めする。

時には言い争いになったり、失望したりするかもしれないが、その先のゴールを共有できた時の喜びは格別だ。

その後は、その喜びを広げていけばいいことに気付いて欲しい。

そして今、こんなお手伝いをしながら僕自身がチャレンジしているテーマがある。

それが「多数決の辞め方」だ。

初めの三人の完全な意思統一(コンセンサス)を広げていくために、多数決はふさわしくない。

だが、すべての社団法人の定款(規約)には、社員総会と多数決の規定が盛り込まれている。

そこで僕は、全会一致の理事会方式を考案した。

つまり、社団のあらゆる決定は、コンセンサスを持つ理事会に委ねることとし、理事会の議決は多数決に依らず全会一致方式とし、一人でも反対すれば否決する。

これはちょうど、国際連合の総会と常任理事会の関係であり、法治されていない世界のやり方として興味深い。

そこで早速、法令チェック。

一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 第49条第2項によると・・・

次に掲げる社員総会の決議は、総社員の半数以上であって、総社員の議決権の三分の二(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上に当たる多数をもって行わなければならない。

  • 第三条 新設合併契約の承認

なんと、法律が「社員総会での議決」を義務付けているのはこれらの「特別事象」に限られており、事業や予算執行などの通常業務は、自由に執行できるではないか。

というわけで、上記10項目を除く法人運営については、社団メンバーが自由に決めていけばいい。

自分で規則(法律)を作ることは、自治の基本だと僕は思う。

そしてその第一歩こそが、多数決からの脱却だ。

本当の合意を目指すからこそ、賛否を明確にし、新たな賛同者を拒まず、去っていく反対者を追うのを辞めたい。