ワンフォーワン

先週、新しい法人が誕生した。

一般社団法人One for Wanは、犬と人の幸せを追求し、犬と人が笑顔になる場と機会を創出することを目的とする。

法人名にちなんで設立日に選ばれた2021年11月1日は、まさにワンが4つも並ぶ「ワンワンの日」となった。

神奈川法務局のある辻堂のレストランに集まった、設立メンバーによる乾杯の味は格別で、僕もノンアルビールに酔いしれた。

今日はそれを記念して、これまでの経緯を振り返りたい。

この法人を立ち上げたSさんに出会ったのは、2012年の5月のこと。

当時、世田谷区産業振興公社の中で僕が開催していた「ソーシャルビジネスセミナー」の「ど素人講座」に参加して下さったのがきっかけだ。

現在僕が拠点としている笑恵館オーナーのTさんとも、このセミナーで知り合った。

Tさんとは、出会って4か月後の2012年9月にさっさと法人(日本土地資源協会)を立ち上げて、2年後には笑恵館の開業にこぎつけた。

だが、当時の僕にとってSさんの目指す「犬を介したまちづくり」は、掴みどころのないプロジェクトだった。

たまたまSさんがフィールドに選んだ駒沢の町に、僕がアントレハウス駒沢を開設したので、ここを拠点に「駒沢ドッグストリート」というプロジェクトを立ち上げた。

まず初めに取り組んだのは、地域の住民にこのプロジェクトの存在を伝えること。

早速プロジェクトの内容を説明するチラシを作成し、駒沢公園周辺の2,000世帯に自分たちでポスティングした。

そころが、その反響は賛否両論の真っ二つ。

「犬のまちづくり なんて、やめてくれ!」と言わんばかりの否定的な反響から「フン害に憤慨」などというダジャレが飛び出す始末(https://nanoni.co.jp/130423-2/)。

でもそのおかげで、「犬が悪い」のでなく「買主=人間のモラルやマナーの問題だ」という気づきが生まれ、「駒沢ドッグストリートプロジェクト(https://nanoni.co.jp/130505-2/)」の目指す方向性が見えてきた。

そこで初めに取り組んだのが、駒沢のまちを「犬と暮らす人の目線」から見た「マップ作り」だった。

ドッグランも併設された駒沢公園周辺は、愛犬家たちにとって人気のスポットだったため、公園周辺には多数の関連ショップが軒を連ね、ちょっとした「犬関連専門店街」となっていた。

そこで、公園周辺の店舗を調査して、「無条件で犬同伴できる店」、「条件付きで同伴できる店」、「犬同伴禁止の店」の3つに分類表示したマップの製作に着手した。

Sさんが自らすべての店舗を訪問し、「あなたのお店は犬同伴を認めていますか?」と尋ねるのだが、「あんたは一体何者だ?」と問いただされてしまう。

これに対し、初めはくじけそうになったSさんだが、次第に堂々と「私は犬を愛するただのおばさんです」と答えるようになっていき、世田谷区の助成を得ることでついにマップが完成した

全ての掲載店にマップを配布できた時の感動は、今でも忘れられない。

だが、せっかく集積する犬関連ショップをSさんがつないだのに、それらの連携は一向に進みそうにない。

そこで、お店同士をつなげるのでなく、飼い主同士をつなげることで、マナーやモラルを学び合う「お散歩教習所」を思いついた。(http://dog-street.net/のメニューより)

こうして2014年3月には駒沢公園内のお散歩コースが完成し、お散歩教習所が始まった。

そして主催者、指導者(ドッグトレーナー)、そして参加者(愛犬家)の誰もが「犬を愛すること」を共有するコミュニティとして「こまいぬクラブ」が形成されていった。

折しも、笑恵館クラブが運営する笑恵館が完成し、僕はアントレハウス駒沢を引き払って、活動拠点を笑恵館に移転した。

その後しばらくの間、駒沢ドッグストリートの活動から遠ざかっていた僕に、Sさんから連絡があったのは今年5月のこと。

これまで孤軍奮闘してきたSさんだが、新たに出会った二人の仲間に、会社をリタイヤしたご主人も加わって、ついに法人を立ち上げたいので手伝って欲しいという嬉しい連絡だった。

もちろん僕が即刻快諾したのは言うまでもない。

まずはSさんと夢を分かち合う(共有する)仲間ができたことを祝福した。

そして、すぐさま僕が提案したことは、「法人の定款を仲間たちと全員一致で作成し、その後もすべてを全員一致で決めること」だった。

犬を愛する人たちに限らず、NPOなど思いを共有する人達がその団結を維持するのは極めて難しく、些細な違いが分裂や分解を招いてしまうことを僕は知っている。

だからこそ僕は、合意形成と全員一致にこだわった。

多数決による妥協こそが、体制に従う忖度を生み、多様性を否定し続ける諸悪の根源だ。

意見の違いを認め合うということは、その決別に躊躇せず、合意さえあれば誰でも受け入れることだと思う。

今日の写真に写っているこの笑顔を見て、あなたにもその合意を感じて欲しい。