先日、ある財団の方とお話しする中で、遺贈の話題になった。
遺贈(いぞう)とは、遺言により人(自然人、法人を問わない)に遺言者の財産を無償(法律上の無償の意。一定の負担を要求できるが対価性があってはならない)で譲ること(wikiより引用)。
自分の死後、財産を親族に相続するのでなく、社会に役立てるために「寄付」をする場合などが、これに当てはまる。
通常の場合、遺贈された財産は寄付金や助成金として役立てられるため、現金化する必要があるのだが、今問題化しつつあるのが現金化できない土地財産なのだとか。
思わぬところで、僕のわかりづらい専門分野に訪問者が現れた。
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遺贈には、すべてを引き受ける包括遺贈と、一部の財産だけを引き受ける特定遺贈の二種類がある。
もしも遺贈者から「私の全財産を社会のために役立ててください」と言われたら、当然包括遺贈を受けるべきだろう。
ところが包括遺贈の場合、財産の中に借金などの消極財産が含まれていても引き受けなければならないので、遺贈を放棄する場合は、遺贈を知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し出ることになっている。
そこで問題は、3か月以内に判断できない財産があった場合ということになる。
それが、売れるかどうかわからない、役に立つかどうかわからない「土地」だという。
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「おカネにならない土地」の問題点は、「自分で保有しなければならない」ということだ。
自分の事業に使うのであればいいのだが、何も使い道のない土地を保有しても意味がない上に、固定資産税などの維持経費が発生する。
そのため、国や自治体などはすでに土地の寄付を受けたがらないし、公益法人なども事業用以外の土地保有は免税の対象とはならない。
したがって、売れない土地は、タダでもいいから引き受け手を探すのだが、そう簡単には見つからない。
不動産仲介業者に相談しても、タダでは商売にならないので取り合ってもらえない。
しまいには、お金を払ってでも引き取り手を探すなど、まるで産業廃棄物のような扱いになってしまうという。
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こんな話を聞いて、今頃あなたは呆れているだろう。
タダでもいいなら、土地の利用者がいないはずがない。
マッチングなり公募なり、やってみればいいじゃないかと。
ところが、与えられる時間は3か月。
それで見つからなければ、包括遺贈は放棄して、せっかくの財産も遺贈者の思いも社会に届けられずに終わってしまう。
ツアー旅行ならキャンセル期間までに催行人数が集まらずに不成立でも、新たな期限を切って再度募集することもできるだろうが、包括遺贈は3カ月間の猶予期間が終わればそれまでだ。
しかし、今後ますますこうした事例が増えていくのが、今突き付けられた現実だ。
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前置きはこれくらいにして、ここからが本題だ。
一見八方塞がりのようだが、これを打開するのが僕の取り組みだ。
僕はそのヒントをルービックキューブで知った。
僕が大学受験をした1976年は、ルービックキューブが大流行した年で、いよいよ入試目前だというのにすっかりハマってしまった。
1週間くらいかかって、角を合わせてから残りのヘリを合わせていくやり方に辿り付いたが、これを繰り返すうちに新たな疑問がわいてきた。
ルービックキューブは、最初に6面がきれいにそろっていて、それを何回かガチャガチャ回すと、あっという間に元に戻せなくなる。
これを元に戻すため、編み出したやり方でひたすらガチャガチャやるのだが、考えてみると初めに崩した時の逆をやれば数回で元通りになるはずだ。
つまり、現状をよく見て、なぜそうなったのかを解明すれば、簡単に問題は解決するはずだ。
だが、ルービックキューブでそれができる人を僕は見たことがない。
むしろ、手元をろくに見もしないで鼻歌を歌いながら目にもとまらぬ手さばきで直してしまう達人ばかり。
これは何を意味するのだろう。
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原因を突き止めて課題を解決するのは、理屈の上では正しいことかも知れないが、僕はそれを疑っている。
現実に問題が発生するプロセスと、それを解決するプロセスは、同じ道を逆戻りするのでなく、違う道を歩いて別ルートから元の場所に戻ることかも知れないからだ。
だから、目の前の課題ばかり見ていても、答えは見つからない。
むしろ、最後にたどり着きたいゴールを思い描き、そこへの新たな道を作る方が現実的だし、ひょっとするとその方が正しいかもしれないとも僕は思う。
いや待てよ、そもそも「問題」と考えるのでなく「過程」と考えた方が僕のイメージに近いだろう。
今起きている現象は、どこへ向かっているのだろうと。
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僕は「遺贈の話」を聞いた瞬間に「がぶり」と食いついて、「すぐに事業提案をしたいからまた会おう」と言って彼と別れた。
僕はこの問題を「遺贈者が亡くなってから3カ月間の戦い」ではなく、「遺贈希望者と僕たちが連携して今日から始めるチャレンジ」にしたいと考えている。
そして、それが日本中に広がって、誰もが参加できるチャレンジにしていきたいと思う。
その第1号が先月発足した「名栗の森オーナーシップクラブ」だ。
まずは僕たち自身が土地オーナーになって、何をしたいか、何をすべきか、何ができるかを考え、やり始めてみたいと思う。