能登の烏帽子親〔よぼしおや〕制度

一昨日の朝東京を立ち、石川県羽咋市に来ています。

Sさんのご先祖はこの地域の庄屋さんでしたが、父上が医師を志し東京で開業したため、祖母の代でここに暮らす家族は絶えてしまいました。

今回の訪問は、築300年を優に超える古民家とその周辺エリアの土地資源をこれからも「活かし続ける」ため、協力者を募り、絆を作ることが目的です。

昨夜は僕がNETで見つけたYさんが地元で集めてくれた皆さんと一気に盛り上がり、まるで「家族の杯を交わすような夜」となりました。

そんな中、「これってまるで、よぼし親だねえ」という参加者の口から言葉が飛び出すと、現地の皆さんの興奮は「そうだそうだ」と最高潮に達しました。

どうやらこの地方では「血縁の無い義理の家族」のような意味らしいので、僕も調子を合わせて喜びましたが、今朝改めて調べてみることにしました。

このことは、世界農業遺産「能登の里山里海」のHP にくわしく記されているので、以下に一部を抜粋します。

http://www.pref.ishikawa.jp/satoyama/noto-giahs/lib_hozen_ijyuu.html

 烏帽子親(よぼしおや)は、能登に古くから伝わる慣習のひとつで、本当の親子ではない別の家族との間で親子の関係を結ぶ、擬制親子のなわらしである。能登では、烏帽子がなまり、「よぼし子、よぼし親」と呼ばれている。擬制親子関係の慣習は、偏在しているものの全国的に分布している。石川県では能登だけにみられ、特に、羽咋市、中能登町、七尾市に多く分布している。七尾市能登島では、現在もよぼし親子の関係が残っている。
 古文書によれば、能登では少なくとも江戸時代には慣習として存在していたと考えられている。烏帽子は、元服する時にかぶる帽子のことであり、この親子関係を結ぶ時期も成人に達した時である。いったん親子関係が成立すると実の親子と同様の関係が続けられ、盆と正月ないし暮れの年二回、よぼし親はよぼし子を招いて饗応する。 こうした関係を結ぶ理由は、一度親戚関係を結んでもその関係が疎遠になるためこれを強化するため、成人に達して以降の相談相手になり援助してもらうため、などといわれている。
 よぼし親子は、農業や漁業といった親の生産労働に対し、子が手間賃をもらわず労働力を提供したり、冠婚葬祭を手伝ったり、雪囲いや茅葺の葺き替え作業へ奉仕したりなどをする。親は子に対し、保証人となったり、仕事の世話をするなど、経済的、物質的な援助を行うほか、実の親には相談できないことにも相談相手となる。こうした相互行為を欠く場合は、社会的に非難されるため、よぼし親子は、地域集落の秩序維持や共同体意識の醸成に役立っている。

ということで、僕が提唱する「所有権の総有による新たな家族づくり」という難解な概念が、このまちでは古くから伝わる制度になぞらえることで、一気にコンセンサスを生み出しました。

そして皆さんが口をそろえて言うには、「これそまさに田舎のうざい習わし」だと言うのです。

しかしその「うざい」習わしをポジティブにとらえ、「自ら進んで義理の家族になる」という意味に置き換えれば、それは素晴らしい習わしに変化する。

そんな発見に、一同頭に雷が落ちたような感動を共有した瞬間だったのかもしれません。

こればかりの文章では、僕の気持ちのほんの一部しかお伝えできませんが、そんな旅3日目の朝を迎えました。

いつも日曜日の午後発行しているこのメルマガですが、今週はこのレポートだけにしておきます。

水曜日に帰るまで、さらに暴れて帰りますので、続きのレポートをどうぞお楽しみに!