80%で前進しよう

4月になったらスタートダッシュするはずだったのに、急遽秩父の親戚の葬儀に行くことになり、年老いた母とその兄弟を車に積んで秩父に向かった。でも、80過ぎの兄弟たちがしてくれた子供時代の話が面白すぎて、本当に楽しい1日となった。特に、自由業の大先輩であるI叔父さんが「君の仕事には〆切がないから儲からないんだ」と言われ、愕然となった。彼の仕事は動植物の細密画で、常に〆切に追われる日々だ。残りの20%にとんでもない手間がかかることを知っているプロは、80%の出来を容認することで〆切をクリヤするという。もちろん時間があれば手を抜かないが、前進し仕事を終わらせることが優先する・・・という。自分で自分に仕事を課している僕にとって、「自分を甘やかす自分」がいることを気付かさせてくれる言葉だった。そこで今日は、今月の〆切を明確にしたい。

僕は笑恵館クラブのNPO認証手続きの開始と同時に、もう一つの団体=日本土地資源協会の活動を再始動する。この団体ができたのは今から5年前、笑恵館オーナーのTさんとの出会いがきっかけだった。笑恵館を起業し、それを次世代の他人に託したいというTさんの願いを聞くうちに、その願いが世界を変えるという確信が僕の中に芽生えてしまった。その1年後には任意団体としての笑恵館クラブが生まれ、2年後には笑恵館が開業し、それから3年を経た今日、笑恵館は「世界を変える新しい事例」として見事に成立した。しかしぼくはまだ、そのことを言葉で社会に説明することができず、実際に笑恵館を訪れ、体感していただかないと「世界を変える」の意味を理解してはもらえない。恐らくそれに気づいた一人ずつが、そこから一歩ずつ世界を変えていければ、笑恵館は十分にその役目を果たしたことになると思う。だがそれは、僕がやろうとしていることとは違うことだ。

 

僕がやろうとしていることは、それをもっとわかりやすく世界に提示し、もっと多様な事例を提示していくことだ。Tさんのような方の「願いを叶えること」ではなく、より多くの人にTさんのような「願いを持たせること」ではないかと思う。その願いを伝えるため、僕は「土地資源」という言葉を生み出した。僕にとっての「土地資源」は、「笑恵館」を説明するための概念ではなく、むしろ「笑恵館」の方が「土地資源」を説明する好事例という位置づけだ。したがって僕がこれからやるべきことは、現状世界を見渡して、笑恵館のような「土地資源の活用事例」を探すこと。そして、それらの事例をつなぐキーワードの中から「土地資源」を指し示す条件となるような言葉を探し出し、その条件を満たすアイデアや土地、そして更なる事例を募ることだ。

 

早速検索リサーチで、「キーワード探し」を開始した。「土地活用」で検索すると、アパート建設や等価交換などの不動産投資など不動産事業者の営業記事や、助成金を使った再開発事例ばかり。土地資源とは、現状の土地建物を活用する概念なので、「建設」や「投資」はNGだ。それらを排除するために、次は「空き家活用」で検索してみると、「リノベーション」や「DIY」などの技術論や、「カフェ」や「シェアハウス」などの事業形態、そして「古民家」や「限界集落」など歴史や社会の切り口で記事が続く。こんな調子で3時間ほど検索を繰り返して判ったことは、僕の最大関心事である「土地所有者=地主」が主体となる取り組みを探し出すのは困難だということだった。しかし、僕が探しているのは「まだ他の人が探そうとしていないもの」なのだから、探し物が見つからないのはとても良いことだ。

 

そこで僕は、再度上記のキーワードで検索をかけ、実現事例を集め始めた。実際に集めてみると重複記事が少なく無く、事例の実数はそれほど多くないことがわかってきた。さらに、それらの事業主体者を調べていくと、次第に仕掛け人たちの顔が見えてくる。そして、彼らが事業を成立させるために、様々な切り口で所有者との関係づくりに取り組んでいることや、その一部はすでに面識のある人たちだということもわかってきた。また同時に、笑恵館を始め僕の周囲で土地資源の活用に取り組んでいる人たちが、埋もれていて見つけにくいこともわかってきた。そうだ、僕が今やろうとしていることは「自分の事業が含まれるような”事例集団”を作ること」ではないか・・・次第に頭の中が晴れてくるのを感じる。

 

僕のやろうとしていることは「土地資源活用」による日本社会の変革だ。そのためにやるべきことは、「土地資源活用」をわかりやすく定義し事例を集め、「新たな資源」と「新たな活用」を生み出すために資源所有者と活用事業者を募って更なる事例を生み出し、そして、その結果もたらされる社会変革の具体イメージを提示することだ。以前宣言したとおり、このプランで今年度のソーシャルイノベータフォーラムに挑むには、以上を今月中に整理して説明できるようにし、9月中に実施できるようにする必要がある。だからまず、今週中に概要をまとめ4/11の経営会議でメンバーに提示できるようにしたいと思う。実現とはあらかじめ目的を明示してから実施すること。今日はまさに、僕の新たな目的を皆さんに明示することで自分のスタートとしたいと思う。そして細かく期限を切り、80%以上の出来栄えであればそれで良しとしながら進めていこう。残りの20%を詰めるより、前進することを優先したい。