違和感とイノベーション

NPO法人「私たちの家」の設立に向け準備を進めている。

この法人ができたら、現在日本協会が担当しているの管理運営を、すべて移管しようと思っている。

そして、その後この法人は「認定NPO法人」になるために、寄付を集めながら賛同者のネットワークを作っていく。

なぜわざわざそんなことをするのか・・・これから皆さんに説明していくためにも、今日はその考察に挑みたい。

今回、新法人を作ろうと決めた理由は二つある。

一つは、470名を超える方たちが笑恵館の取り組みに賛同し、全国から集まって笑恵館クラブの会員となってくださったこと。

もう一つは、笑恵館の経営を実現するために作ったはずの日本土地資源協会と、笑恵館クラブの目指すものが違うこと。

いずれも、初めから判っていたことのはず、なぜ今更そんなことを言うのかと、初めは僕自身が不思議に思った。

でも、実際に笑恵館を3年間運営してみて、ようやくわかったことがある。

それは、僕がこの2点を解決すべき課題だと思い込み、結論を勝手に決めつけていたことだ。

笑恵館クラブの会員は地元地域だけでなく、全国各地から集まった。

WebやSNSで発信すれば当然そうなることは分かっていたので、当初から広報誌を作り掲示や配布をして、地元地域での広報活動に力を注いだ。

その甲斐あって、約25%の会員が同じ町内に住んでおり、地元密着型のコミュニティができつつあると自負していた。

しかし、だとしたら、それ以外の75%の賛同者は、不本意なハズレのメンバーなのか。

そんなはずはない、むしろ大多数の方たちが、身近な存在でもない、頻繁に訪れることもできないのに賛同し入会して下さった。

僕は、その現実を直視していない自分に気が付いた。

470人の方が賛同して下さった笑恵館クラブとは何なのか、僕自身がまるで分っていないのではないだろうか。

更に、笑恵館というプロジェクトは、その企画・運営のすべてを日本土地資源協会が行っている。

笑恵館のすべてを協会がオーナーから借り受けているので、全ての利用者は日本土地資源協会と契約し、料金を支払っている。

笑恵館クラブという活動は、言ってみれば笑恵館の主要事業ではなくサークル活動的な位置づけだ。

当初この協会が、公益法人を目指して内閣府に申請した際も、笑恵館クラブという会員制組織の公益性をうまく説明できなかったが、それはやがて乗り越えるべき課題としか考えなかった。

しかし、笑恵館で3年暮らすうち、ここに集う人たちにとって、笑恵館クラブの交流にこそ意味があり、日本土地資源協会の存在は単なる黒子に過ぎないことを痛感した。

この協会が対象としているのは「土地所有者」であって、決して「地域住民」ではない。

だが、賛同して下さった470名の大多数は土地所有者ではなく、笑恵館を介した家族づきあいに魅せられた市民たちだ。

意図したことと現実化したことが微妙にずれていることが、こんなに深刻な違和感をもたらすとは。

いつも「実現」について論じている僕だからこそ、妥協する気にはなれない。

つまり、この違和感を解消しなければ、イノベーションは自分自身から始めないと難しいと思う。

笑恵館クラブ470名の大多数にとって、笑恵館は「自分の家や自分のまちでもこんなことができないか」と考えるきっかけになったはず。

だとしたら、全国に笑恵館のような「施設」を作るのでなく、笑恵館のような「自分たちの家を介したコミュニティ」を作る取り組みに挑むべきという考えにたどり着いた。

そこで僕が決意したのは、日本土地資源協会と笑恵館クラブの分離だ。

当初は、笑恵館クラブを法人化しようと考えたが、今は新たな法人を生み出すべきだと考えている。

揺れ動く僕の動きを、笑恵館オーナーのTさんはよく見てくれていると思う。

「やってみないと分からないことばかり、必要な変化は仕方ない」とフォローしてくれる。

とはいえ、こうしていくらか説明的に話ができるのは、すでに過ぎた過去だからであって、これからやることの説明は、まだまだ心もとない。

だから今回のは、まだふらついている僕だからこそ、初めに発起人を集め、皆さんに僕の考えをぶつけさせていただきながら進めている。

470人に問いかけながら、新しい事業を生み出すプロセスを、今僕は満喫している。

そしてこの法人は、常時100人以上の賛同者から寄付を集め続ける「認定NPO法人」になることを目指している。

それは一義的には、笑恵館のようなコミュニティのよりどころとなる非営利不動産の提供(寄付)を受ける免税の受け皿となるためだが、それ以上にそのコミュニティを、世代を超えて支え続ける「永続的な事業体」になることが必要だ。

そのために、この法人そのものを永続的なコミュニティにしたいと思う。

今は、そのことで頭がいっぱいだ。