ビジネスの十分条件

今朝、テレビのワイドショーを見ていたら、鹿児島県三島村の竹島にある簡易郵便局の職員がいなくなったために休業し、週2日しか営業できない状況になっているという。竹島簡易郵便局は、もともとは鹿児島中央郵便局の分室だったが、7月に日本郵便から業務委託された簡易郵便局になり、それに伴い日本郵便の職員ではなく県外出身者の男性が村の嘱託職員として窓口業務を担っていた。ところが、その職員が10月27日に休暇を取って県外に出たまま戻らず、連絡が取れなくなっている。どうやら、わずかな報酬や離島での孤立生活などに耐えかねての遁走とみられている。人口80人の竹島が属する三島村には、3つ島に合わせて約400人が暮らしているが、先般の総選挙の際「寝たきり老人以外投票率100%の村」として話題になったことを思い出した。

 

ご存知の通り、郵政民営化により地方での不採算郵便局の統廃合が一気に進み、特に過疎地での郵便局不足は深刻だが、こうした状況は郵便局に限ったことではない。JRでは地方のローカル線の廃止に留まらず、新幹線と並走する在来線の切捨てが行われている。先般北陸新幹線で金沢に行き、そこから能登を巡った際、帰りは途中駅の富山まで在来線に乗ってみたら、車内の改札がやってきて「この線はJRではないので別料金です」と言う。さらに、途中の富山県境からはさらに別の会社になるという説明に、向かいに座った老夫婦は理解不能で途方に暮れていた。また、ガソリンスタンドの不足も深刻だ。身近にガソリンスタンドがない「給油所過疎地」が増えていて、市町村内の給油所が3カ所以下の自治体は2017年3月末時点で全国に302市町村と、4年前に比べて約2割増え、1つもない自治体も12町村あったという。

 

そもそもこれらの社会インフラを担う公益的事業を民間ビジネスに委ね、あるいは国営事業として育成したのちに民営化していくのが日本のやり方だとしたら、これらのビジネスに対し、一般の「営利ビジネス」とは異なる明確な位置づけを行うべきだと僕は思う。それは、不採算部分を切捨てて、ひたすら営利を追求するビジネスとは対照的に、不採算部分の存続のために採算部門の収益を再配分するビジネス・・・つまり「非営利ビジネス」のことを指している。現状「株式会社」は、株主への配当を最大化することを目的とする「営利ビジネス」と短絡的に解釈されているが、果たしてそうだろうか。こうした企業の株主すべてが、金銭配当の追及のみを求めているとは思えない。投資を通じて、社会インフラを担いたいと願う社会貢献の心を持つ株主ならば、過大な配当や内部留保でなく、社会構造の改革への取り組みを望むはずだ。

 

僕は、1999年に会社の倒産を経験したが、その破たん処理の中でこのことを学んだ。当時僕の経営する建設会社では、20件の工事が進行中だったが、その中には、すでに完成間近の現場もあれば、まだ未着手で何もしていない現場もあった。ある日会社が倒産すれば、完成間近の現場は残代金で十分に完成できるが、着手したばかりの現場は着手金分の負債が残るだけ。つまり、発注者に対する影響には極端な格差が生じてしまう。そこで僕は、すべての発注者に対し「すべての工事をすべての残代金で完成させてほしい」と願い出た。つまり、完成間近の現場の収益を、着工直後の現場の工事代金に充てさせて欲しいということだ。この時僕が目指したのは、利益の確保ではなく全現場の完成だ。その結果、すべての発注者が、この申し出を受け入れて下さり、すべての仕掛かり工事を予定通りに完成することができたのだ。

 

ビジネスの価値を金銭だけで測ることのむなしさを、この時僕は痛感した。金銭上の収支が成り立つことは確かに大切なことだが、それは、ビジネスの必要条件であって、十分条件ではない。ビジネスの価値は、それが「何をもたらすのか」であり、人はその価値に対し投資をし、企業はそれに配当で報いるだけだ。今話題の社会的責任投資(SRI:Socially responsible investment)とは、同じ投資をするのなら、法令順守、労働等組織内の問題だけでなく、環境、雇用、健康・安全、教育、福祉、人権、地域等さまざまな社会的問題への対応や積極的活動に対し投資し、健全なお金の流れを造ることによって持続可能な社会を構築することを目的としたものと考えられている。

 

昨日は、御宿に移住した若者たちが、古家をみんなで直して作った活動拠点のプレオープンに立ち会った。来月からは少しずつ時間を作り、僕もこの拠点で暴れたいと思う。ここでこれから始まるのは、小さな市民ビジネスへのチャレンジだ。だがそれは、余った土地資源を活用し、埋もれた人材を呼び起こし、一緒に新しいまちを作るチャレンジだ。だからこそこれを、きちんとビジネスにしなければならない。誰もがお金を払って参加したくなるような、ワクワクするプロジェクトにしていかなければならないと、僕は強く思う。