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■第9回池尻ロマンス座レポート

2006年7月から始まった我ら「ロマンス座」も今回で9回目。一区切りの最終回ということで、メンバーの出澤氏が企画提案した活弁士を呼んでの無声映画上映会が本日3/17に開催された。

はじめに、今回ご協力頂いた日本で唯一、無声映画を専門に扱ってる映画会社である潟}ツダ映画社さんの活動紹介。アニメ版の無声映画、そして、マツダ映画社さんイチオシの「バンツマ」こと阪東妻三郎の生涯を追う映像が上映された。その後、本日の第一演目「チャップリンの放浪者」(1916年製作)を斎藤裕子さんの活弁と共に鑑賞する。

バイオリンで流しをしているチャーリーは、放浪の旅の途中、過酷な運命の下でこき使われている少女エドナと出会う。見過ごすことの出来ないチャーリーは、エドナを助け出そうとする。そこへ著名な画家がやってきてエドナの絵を描くことになる。その絵は世に出て、ある富豪夫人の目にとまった。その夫人が実はエドナの母親で・・・と、最後は、めでたし、めでたしで終わる話。チャップリンが何度となくちょこちょこ動き回る場面が出るが、さらりと、なんともいえない絶妙なタイミングで、台詞を口にする弁士・斎藤さん。無声映画で観るのが当たり前と思っていたチャップリンの作品が、斎藤さんの活弁により息を吹き入れられ、輝きを増していた。

10分間の休憩中には、別件の仕事の都合により本日の活動に参加できなかったIID校長であり、ロマンス座の代表者・松村氏によるロマンス座の活動紹介がなされた。(実は、松村氏は、参加できなかったことを悔やんでも悔やみきれず、執念と根性で仕事を抜け出してきたのである)休憩後、もう一つの演目「瞼の母」の上映。

五才で母親と生き別れ、九才で父親と死別した忠太郎は、生い立ちの不幸さからグレて渡世人となっていた。瞼の裏におぼろげに浮かぶ母の面影を求めて、風の便りにすがり江戸へとその消息を訪ねると、母は大店の料理茶屋・水熊の女将に納まって、忠太郎とは異父妹にあたる娘をもうけていた。

再会した忠太郎に母は、財産目当てだろう、と忠太郎をなじる。忠太郎はただひたすらに、母の愛情を求め、再会かなった暁に、もし母が不幸な身の上でありはしないかと、金百両を胴巻に納めけっして手をつけずに持ち歩いていたほどだった。自らの母への幻想を母本人から打ち砕かれた忠太郎は母のもとを去る。外出先から戻ってきた娘・登世に非人情を涙ながらに責められ、お登世の言葉に、自分の心得違い気付いた母は、お登世とともに、忠太郎を探して追って行く・・・本作は結末が異なるものが複数存在するが、今回はハッピーエンド。

10数人の登場人物の声を、巧みに操る斎藤弁士の声色に魅せられ、観客全員がスクリーンに吸い込まれていた1時間であった。明かりがつけられた会場では、ハンカチで目頭を抑える人々を目にした。司会者の間中氏も涙を拭いながら締めの言葉を述べ、9回目のロマンス座も無事終了した。

最後に、無声映画について紹介しておきたい。こうして今でも無声映画を上映できるのは、終戦後、各地に散逸してしまったフィルムの収集にあたった弁士・二代目 松田春翠(現・マツダ映画社設立者)の努力に他ならないことを覚えておいて頂きたいと思う。

ひょんなことから集まった10数人の若者と松村氏により始まったロマンス座。来期からは映画交流会にとどまらず、多方面にて活躍予定?です。今後のロマンス座の動向も要確認!!映画交流会は定期的に毎月第二土曜日におこうなうことになります。おたのしみに〜
110|20070318

初めて活弁士付きで無声映画を観た。不思議な感覚だった。
活弁士が映画の登場人物に乗り移り、本当に登場人物が話しているようだった。映画が始まってすぐに引き込まれた。「チャップリンの放浪者」と「瞼の母」の2本立てだったが、洋画より邦画の方が乗り移り度高いんだなあと思いながら観ていた。「瞼の母」のラスト近くのシーンでは、映像と活弁士の間のとり方が絶妙で、演劇のラスト近くのグルーブ感のようなものがあり、涙が出た。ハッピーエンドの物語が好きだ。

ちなみに活弁士さんと休憩時間に話したが、普段のトークも活弁みたいにめくるめいていた。なんでも活弁士さんのお母様が天性のめくるめく話し方の持ち主で、それが遺伝したそう。

ところで、3月17日はロマンス座の第9回目だった。近所の団地に住むおばあちゃん二人組(サト90歳とマサ80代)、団地シスターズは9回ほぼ毎回来てくれた。二人ともいつも帽子をかぶっている、着こなしが上手な東京のおばあちゃん。おばあちゃんは映画の途中でいろんなことを話すので、それも込みで映画を楽しめるのがロマンス座のいいところ。毎回、シスターズを途中まで送っていくのだが、今回はシスターズの顔がすっきりしていた。今回の映画は当たりだったのだろう。「アメリ」の時や「今宵フィッツジェラルド劇場で」の時は釈然としない顔をしていた。

ともあれ9回目を迎え、スタッフ(20ー30代)とおばあちゃん達が普通に仲良くなってきた。距離が近くなった。今後も続いていくロマンス座で、この不思議な交流が深まって変化していくのがとても楽しみだ。
yem|20070318

池尻ロマンス座X活弁士企画、いいだしっぺの感想です。

最初に感じたのは、活弁士とこのIIDのプレゼンルームとの空間の相性の良さです。この試写室のつくりは特殊で、座席の部分は狭く傾斜もなく、それに比べて、スクリーンが格段大きい。音響も音質がとてもいいとはいえないのですが、活弁士斎藤裕子さんの声、大きなスクリーンに少し劣化した無声映画の映像、それらが溶け合って、とても映画的な素敵な空間が生まれていました。

それはこの池尻ロマンス座にしかできない空間であり、これからの可能性を感じました。

最近流行のシネコンの空間では映像も音響も上映される映画すべてが進化しています。それは人が優雅に快適に楽しめるための最新の空間です。先日の池尻ロマンス座はそれの間逆にありました、優雅快適ではないけれどきわめて初期の時代の映画の楽しみ方ができる今では貴重な空間。そんな空間を楽しめるのはとても贅沢なことだと思いました。そして映画本来が持つ温かさが感じることができました。

これからも続けていきたいです。マツダ映画社松田さん、活弁士斎藤裕子さんに感謝します。
イデッチ|20070319

「池尻ロマンス座」の一員として参加した、初めての上映会。そして、初めての活弁士。

無声映画は何度か見てきたけれど、あれはあれで完結してるものだと思っていた。だから、「活弁士」という存在に興味はあったけれど、正直「余剰じゃないの?」という思いも、あった。が、リハーサルが始まって、驚いた。活弁士がいることを念頭において脚本が書かれたかのような自然さ。声の入りのタイミングの良さ。思わず、準備そっちのけで見入ってしまう私。映画が始まった。スクリーンの隅、台本を読む弁士の斉藤さんの手元だけ光が照らされる。しかしそれが、場になじんでいる。その場に自然にたたずんでいる。

まずは軽く、昔の日本のアニメが上映される。意外にもバックス・バニー的なユーモアのセンスが効いていて、こんなものがあったのかという新発見。このアニメを提供して下さったのは、デジタル・ミームのグリーンバーグさん。日本人じゃない人の方が日本の文化の良さを分かり、保存してくれる、と話していた日本画廊の山本豊津さんを思い出した。

さて、いよいよ本題。まずは、チャップリンの「放浪者」
チャップリンがおなじみの服装で登場、途中までは「活弁士」いてもいなくてもいいかも・・・ と思っていた矢先、ジプシーに囚われ、洗濯をするエドナのもとにチャップリンが登場。台詞の早さとトーンが、俄然スクリーンの動きを加速させる。「この声がなかったら、こんなに可笑しいだろうか?」と思わせる、絶妙な台詞まわし。思わず大爆笑。こんなにイキイキするものなんだ! 恐れ入った。

小休憩を挟んで、最後の上映。「瞼の母」なんでも、これは氷川きよしも歌ったりと、かなりメジャーなストーリーらしい。が、無知な御陰で何の先入観もなく、映画に入り込めた。解説に加え、二組の母、兄、妹の声色をいとも自然に使い分ける斉藤さん。いや、活弁士が使い分けているということを忘れてしまう臨場感だった。

最後の一時間はあっという間だった。誰一人、途中で席を立たなかった。
そして、満足げに帰って行く人々、余韻に浸る人々。
そして、また、このIIDの空間の手作り感、ちょうどいい小ささが「場の共有」という雰囲気をもたらしてくれた。
この空間が全ての映画に相応しいとは思わないけれど、今回の映画にとって相思相愛の場だったのではないか。
こんな映画を、また、参加する人々みんなと共有したい。
板垣|20070319

さて映画のレポートですが、感想がまとまらないので、箇条書きにて報告します。

・スクリーンに映像が映しだされた時の、おばあちゃんの「おっ」とか「始まった」みたいな声?でいつものロマンス座になる感じ。
・古い日本のアニメって、ストーリーがシンプル。それで「白」と「黒」のグラデーションが絶妙。
・会場が暗くなり、活弁士の手元に灯りがともされた時、ライブの幕開けといった感じ。
・活弁士と座席との距離感が絶妙。
・マイクから出る声がいつものスピーカーの音より体に来るに感じ、妙にワクワク。
・映画を見つつ、たまに活弁士を見るというライブ感がたまらん。
・チャップリンって久々に見たけど、切ないイメージだったから最後のハッピーエンドに何故かがっくり。
・瞼の母のお歯黒に時代を感じてしまった。今ってピッカピッカの「白」にしたがるから。

ということで、読み返すとモノクロ映画だけに、「白と黒」、「陰と陽」にものすごく惹かれている自分がそこにいました。以上簡単に報告です。
こう|20070320

last updated 20070319