非営利と公益

「非営利」と「公益」は何が違うのか。
「非営利」は「利益を得ない」ことで、「公益」は「みんなの利益になる」ことなら、ほとんど同じじゃないかと僕は思った。
だが、「公益」の法的解釈は、「特定の個人や一部のグループだけでなく、社会全体や不特定多数の人々の利益になること」なので、さきほどの「みんな」の範囲が問題となる。
11年前に内閣府で喧嘩したのは、会員制の笑恵館が一部のグループと判断されたためだった。
だが待てよ、「非営利の利」と「公益の益」を同じ「利益」と解釈しているが、仲間で配分せず主べての人に配分するのが「非営利」かというと、それも違う。
「非営利の利」は「余剰金」のことで、「公益の益」は「メリットや効果」のこと。
「利」と「益」が指すものを統一しなければ、この議論は進まない。
そこで、ここでは「非営利」の公益性について検討したいので、「公益」の議論に合わせたい。
つまり、「非営利」とは事業によって何を得ようとすることなのかを考えよう。

そもそも非営利事業で「利益(余剰金)」が発生しない訳ではないが、それを配分せずに繰り越して、目的実現のために使うことを意味している。
つまり、「非営利」とは「すべての収益を目的実現のために使うこと」と言い換えることができる。
そこで問題となるのは、この「目的」だ。
これが「公益目的」でなければ公益事業とは言えない。
公益認定法では、第2条4項で「公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。」と定め、その内容はきちんと定義せずに、別表に例示しているに過ぎない。
もちろん別表には22の事業が例示された後に「23 前各号に掲げるもののほか、公益に関する事業として政令で定めるもの」というお決まりの「その他」があるが、政令には特段の定めは無い。
そこで僕は、23番目の公益目的を創り出し、それを既存の22を駆使して説明したいと思う。

僕が「非営利」にこだわるのは、その事業目的の公益性を論ずる前に、金銭以外の目的を持って欲しいから。
何を願い、何を目指すのかを考えずに、とりあえずお金を稼ごうという発想こそが、営利主義の問題だ。
無目的な行為は、やがてそれ自体が目的化し、金儲けと蓄財を目指すようになる。
こうしてお金は貯めこまれ、使われないためにその価値が維持されて、日本では長いデフレが継続した。
貯めこまずにどんどん使えば、市場のお金は増え続け、それがインフレとなるはずなのに、さらにお金は投資や運用に回されて、貧富の格差は広がるばかり。
だが、豊かさとはお金の量なのか、お金さえ再配分すれば格差は解消するのだろうか。
お金の力で幸せになれるのは、極端に言えば、他力本願の拝金主義者だけ。
それは自分自身の夢や幸せを、自分で考えずに世間のメニューから選ぶ人、
もはや大多数の人たちが、そんな自分を受け入れている。

だが僕は、そんな自分になりたくないし、そうでない多くの人々と関わりながら、これまで生きてきた。
だからこそ、自分の夢や願いの実現(起業)を目指す人を支援して、その流れの中で笑恵館に関わった。
今にしてみれば、僕が「土地を売買する資産でなく、使うための資源にしたい」と思い立ち、日本土地資源協会を立ち上げたのも、お金でなく実際のメリットを追求すべきと考えたからだ。
11年前の公益申請で僕が選択した公益目的は、次の4つだった。
17 国土の利用、整備又は保全
19 地域社会の健全な発展
20 公正かつ自由な経済活動の機会の確保、促進、活性化による国民生活の安定向上
21 国民生活に不可欠な物資、エネルギー等の安定供給の確保
そして、これらを繋ぐキーワードが「私有地の公益化」だったことを踏まえると、「営利から非営利」という大きな流れは変わらない。

さて、本題はここからだ。
その公益性を説明したい僕の「やりたいこと」は何なのか。
「土地に託した願いの実現を支援すること」は、果たして「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するもの」と言えるのか。
これを先ほどの「私有地の公益化」と合わせると、「私有地に託した所有者の公的な願いの実現を支援すること」となり、具体的な対象者が浮かび上がってくる。
先回、上記の4つの目的を実現するために「私有地の公益化」という手段を提示したのに対し、今回は「所有者の支援」という目的が上記4つの目的に寄与することになり、個人の願いをみんなの願いに拡張する創造的な取り組みとなりそうだ。
考えてみれば、法律が提示する22の公益目的だって、それらは国民の幸福という目的に資する手段に過ぎない。
そうか、今僕はまたしても「手段の目的化」に惑わされていた自分に気が付いた、
たとえ法的な申請であろうとも、国の提示するメニューから選ぶのでなく、自分発の願いを叶えるために、申請書を書こうと心に決めた。