存続の担当者

あるプロジェクトの存続が怪しくなってきた。
それは、ある人の願いを叶えるために相談を受けたことから始まった。
僕は、他の相談者同様に、月額1万円で夢の実現のお手伝いを請け負った。
やがて、もしその願いが叶ったら、自分が死んだ後もやり続けて欲しいと言う願いが加わったので、これも二つ返事で引き受けた。
その後、事業は順調に推移して、当初の相談から14年の月日が流れた。
僕も相談者も、ともに歳を取り、次第に継承の時期が近づいてくるのを感じる中で、相談者から「そろそろこの事業を辞めるかどうか、方針を決めたいと思います」との申し出を受けた。
そもそも本人の願いから始まったことなので、本人の気持ちが変わることは想定済みのはずだった。
だが、僕の動揺する気持ちは何なのか。
今日は70歳を前にして、焦る自分の気持ちの整理をするために、このブログを書くことをお許し願いたい。

まず、あえて具体的な話をしないのは、この事業をきっかけに土地資源活用の世代を超えた存続に取り組み始め、今や他にも数件の事業が動いているからだ。
いや、それどころかほかにも多数の相談を受けていて、この課題に取り組む事業手法の確立に邁進している最中だ。
なので、本件に限らず「事業主体者の心変わり」は想定すべき課題であり、これを問題化し解決することが必要だと思った。
果たして「心変わりによる中断」は、事故や災害などのようにやむを得ない事情による事業中断なのかを検討したい。
むしろ、これまでの運営状況が「心変わり」を生んでしまったとしたら、それは改善しなければ未来はないし、今回の事件は、僕にそれを気づかせてくれた、重要なサインだった。
恐らく現場には「心変わりを促す状況」があったと同時に、「心変わりを阻止する状況」が欠けていたのだろう。
この事業にとって「心変わりしないこと」は大前提であり、そのために上記の2点は当然考慮すべき事項だったはず。
実は、僕にはいくつかの心当たりがあるので、それを列記することから始めたい。

まず、「心変わりを促す状況」について。
それは、本人の負担や責任が一向に減らないこと。
目的の実現に向けて進むからには、苦労が報われて、次第に楽になることは極めて重要だ。
もちろん更に欲が出て、自ら忙しくしてしまうのは「前向きの心変わり」であり、ここで避けたいのは「後ろ向きの心変わり」で辞めてしまうこと。
あくまで「前向きな心変わり」を繰り返しながら、人生を全うしたい。
そして、「心変わりを阻止する状況」について。
それは、「心変わり」できる権限や立場を奪うこと。
例えば、本人が代表者や責任者であることが、負担を生み出すとともに影響も大きい。
特に「後ろ向きの心変わり」の影響を減らすためには、早めの承継が欠かせない。
リーダーでない人が事業を辞めたいと言っても、それは事業でなくその人が辞めることを意味する。

こうして考えてみると、リーダーシップの本質が見えてくる。
リーダーシップとは、「リードする人の心構え」であり、それは誰もが持つべき「事業を推進するための心構え」かもしれない。
土地資源活用における推進とは、経済的な成功でなく、安定的な存続だ。
そこには優秀で何でもできるリーダーはむしろ不要で、みんなから支えてもらえる調整役がふさわしい。
大家と店子の関係でなく、「家族のような関係」になるとは、親でも子でも適材適所に役割分担することで、権利も責任も分け合うことだ。
たとえ何もしなくても、継続にこだわる人こそがリーダーにふさわしい。
継続の意思が揺らいでいる人には、断じてリーダーの資格はない。

とはいえ、僕がいちばん大切にしたいのは、本人の自発的意思だ。
規約や契約は、自由な意思を縛るのでなく、共有すべき目的や方法を記すだけ。
なので、僕の業務契約はすべてが1年契約で、1月1日付で更新する。
その理由が何であろうと、すべての契約は年末になれば解約できる。
永続を目指すのに毎年更新するのは、むしろ毎年継続意思を確認したいから。
そのためには、互いにその意志を持続したくなるような工夫と努力が欠かせない。
今の僕の動揺は、その努力を怠った報いに他ならない。
と言う訳で、さっそく行動開始する。
存続を目指すすべてのコミュニティで、存続の努力をしているか、総点検を開始する。
そして、存続の努力の担当者をリーダーと呼ぶことにして、年寄りは、それを後ろから見守るマネージャーになりたいと思う。