所属先を作る

先回は代替経済の話に脱線してしまったが、今日は「所有をやめて所属に移行する」ための、言葉の整理をしてみたい。
僕はこれまで「所有」にこだわり論じてきたが、大きな間違いに気が付いた。
それは、「所有」が現状の諸問題を理解する上で重要な手がかりであることは確実だが、「所有」そのものが解決策となる訳ではないことだ。
え、何言ってんの、松村さんは前からそう言ってるよ・・・とあなたは思うかもしれない。
確かにすでに5年前、拙著「地主の学校」の中で、そもそも日本には「所有」の概念が無かったことを述べている。
それなのに、明治時代に「ownership」の訳語として使われ始めた「所有」が、それを維持することでなく、手放すことを中心に論じられることを嘆いてばかりいた。
つまり、「所有し続ける善」に対し、「手放すことを悪」とする、僕の嫌いな善悪論に終始していたわけだ。
僕が気付き、改めたい間違いは、まさにこの善悪論のこと。
「所有の善悪」を論じるのでなく、「所有を手掛かり」に新たな選択肢を提言したい。

そもそも、寿命ある人間が永久に何かを所有し続けることなどできるはずがない。
すべての人は、自分の所有物をいつか手放さなくてはならないはずだ。
そこで、所有を手放すことで得られる対価は何なのかについて、冷静に考えてみよう。
最初に思い付くのは、売却や譲渡によって得られる金銭や交換条件、交換によって得られる別の土地だ。
これは、手放す所有物とえられる対価の損得勘定を。人それぞれが繰り返す営みだ。
そしてもう一つは、死ぬまで手放さず相続や遺贈に委ねることで、はっきり言って何もしない一番楽なやり方だ。
これまでの「所有」は、大別すると上記のいずれかで終了すると考えて、ここでは前者を「処分」、後者を「相続」と呼ぶことにする。
結局、所有者が所有物を手放すやり方は、生前の「処分」と死後の「相続」に分類できることになる。
だが、僕の提唱する土地資源の法人化(総有)は、これらのどちらとも異なるやり方だ。
今日はあえて、土地所有の辞め方として説明をしてみたい。

「所有の辞め方」には2種類あって、一つは「所有を辞める(手放す)」ことだが、もう一つは「所有の逆をやる」ことだ。
つまり「所有する」から「所有される」に変化すれば、所有から完全に脱却できる。
例えば、所有者が「僕の家」と言えば、所有者はその家を「所有している」のだが、所有者と同居する息子が「僕の家」と言っても、息子はその家を「所有していない」。
この場合の「の」は、所有の「の」でなく、「会社の社員」、「学校の生徒」などのような所属の「の」となっている。
自分の所有する家に妻と両親と子供たちを同居させている夫が、家を家族全員の共有財産にすることは、所有者から所属メンバーに変わること。
昔は「家」が「会社」だったので、「家長と家族」は「社長と社員」の関係だった。
社長と社員の関係は、あくまで「主従関係」で、主と奴隷の「所有関係」ではない。
その意味においてでも、「所属は単なる所有の逆でなく、別の概念と言えるだろう。

僕はかつて自分の取り組みを「脱相続」と呼んで、「承継」を提案したけれど、「相続」と「承継」の違いは、その対象が「財産の相続」と「事業の承継」に他ならない。
「財産」を「事業」に変えることが、「所有」から「所属」に変えること。
僕はかつて建築屋だったころ、都心の一等地で商売をやめてビルを建てる人たちと付き合ってきた。
後継者のいなかったりビルにした方が儲かったりと事情は様々だが、賃貸事業とは名ばかりで、商売をやめて財産にしたことは明らかだった。
働かなくなったビルオーナーの仕事は何もしないことなので、多くの後継者たちは何もせずに滅びていった。
その経験から、笑恵館ではまずオーナーから家賃収入を取り上げて、常駐管理人として仕事に対する報酬を支払った。
笑恵館の事業化とは、賃料収入を高めるという事業目的のためにすべての収入を投資すること。
これが賃貸事業の非営利化で、自力永続には欠かせない。
何もしないことでなく、何かをし続けることが継続だ。

最後に、僕がなぜ所有より所属を選ぶのかをお話ししたい。
所有が目指すのが財産を増やすことなら、所属が目指すのは絶えず仲間を確保すること。
所有は集めた財産を独り占めできるが、所属は仲間が増えると分け前は減るばかり。
もちろん僕にとって一番大切なのは、自分自身の幸福に決まってる。
だが、どんなに多くても所有できるのは自分の分だけなのに、所属なら誰でもいくらでもできる。
僕は、何でも買える大金や、何でもできる家や車を独り占めするよりも、様々な土地や組織に所属して、様々な体験や気づきを得ながら生きていたいし、そんな所属先を作りたい。
その所属先を「国」と呼び。世界中の人たちと素敵な国づくりを競いたい。
そして、あなたをお誘いできるのも、所属しかないでしょ。