僕の子づくり

先週は、21歳の林業女子を口説いて交際を申し込み、19歳の大学受験浪人と進路を熱く語り合った。
69歳の僕にとって、50歳の年の差を乗り越えて、相手と自分の双方を知ること自体が挑戦だ。
僕より50年分の経験値が不足する彼らに、僕の思いや考えを伝えるには、その具体性が欠かせない。
だがそれは、相手の若者にとっても同じことで、彼らのぼんやりとした夢や願いを経験豊かな爺(じじい)に伝えるために、その具体化が求められる。
そんな必要性を共有できた時、爺と若者の対話が成立する。
認識共有とコミュニケーションは、まさに仲間づくりの両輪で、僕が目指す事業承継の必須プロセスだ。
林業女子に申し入れた交際は、結婚でなく思いの継承を目指すものだと伝わった時、彼女の父親も快諾してくれた。
とはいえ、林業女子とは名栗への往復車中で6時間、浪人生とは台風一過のメゾンふきで6時間、長い時間を必要としたが、その時間こそ僕の宝だ。
僕が若者と対話することで、相手を鏡にしながら自分を知れる喜びは、相手の若者にとっても同じ価値を持つに違いない。
今日は、そんなやり取りのトピックをいくつかご紹介して、さらなる対話につなげたい。

林業女子に一目ぼれしたのは、自給自足を目指す中で、森の購入を夢見ていると聞いたから。
僕は即座に名栗の森の後継者と決めつけて、「森を購入などせずに、名栗の森をもらって欲しい」と切り出した。
名栗の森のオーナーは、祖母から森を相続したものの、それを活用できずに困っていたので、僕がオーナーシップクラブを提案し、固定資産税を割り勘で負担する仲間を募って運営している。
日本は国土の約7割が山林なのに、そのほとんどが放置され、管理は補助金に依存する森林組合などに丸投げだ。
そんな所有者が後継者を育てるはずもなく、山林の放置が広がる上に、売却以外の打開策が見当たらない。
そこで、僕らが始めた「共同所有」による山林活用を広げたいと熱く語ったところ、林業女子は見事に食いついてくれた。
もちろん彼女は現在就活中で、応募先の3社すべてから内定が出る引く手あまたの状態だ。
もともと彼女の母親から、娘が林業会社に就職するなどと言い出して困っていると相談されて知り合ったのに、「生産現場に乗り込んで林業ビジネスを学び体験することは、素晴らしい選択だ」と絶賛した。
たとえ親に反対されても、僕を賛成する叔父だと思って、いつでも頼って欲しいと話したら、父親も笑ってくれた。
そして、「確実に僕やオーナーの世代は先に死に、君たちの時代が来るので頼んだぞ」と言うと、彼女はしっかり頷いてくれた。

建築家を目指す19歳の浪人生は、ひょんなきっかけで知り合った若手建築家KK君の事務所にインターンとして弟子入りし、大入り庵の運営を手伝っているところで僕と出会い、メゾンふきに遊びに来てくれた。
彼は「人生の目的を明確化することの必要性」を高校で学んだことを誇りにし、受験勉強ばかりするのでなく、建築家の実態を体感することも欠かせないと言う骨太の若者だ。
さらには、福井の実家や田畑などの継承も気になっており、そんな課題に取り組む僕松村に興味を持ったと言う。
そこで僕は、その大切な目的と言うか、目指す建築や世界のイメージを尋ねたところ、抽象的な説明が延々と繰り返されてしまうので、「例えば〇〇みたいな具体例を述べよ」と迫ると、考え込んだ上に詰まってしまう。
ここで肝心なのは、黙らずにとにかく答えること。
その例えが不適切でも、それを無理にでも説明しながら、その間違いを明らかにすることで、答えに近づけばいい。
そもそもそれが新しい概念なら、多くの人に分かってもらえるはずもなく、どんなに具体的に説明しても褒めてもらえないかもしれない。
だがむしろ、理解されたり褒められることの方が誰もが知ってる思い込みかもしれないので、そんなやり取りの中から答えを探すべきだろうと、議論は次第に盛り上がった。

先週はこの二人以外にも、ひと環境計画30周年に来てくれた26歳のNT君やTNさんのお嬢さんなど新たな若者と知り合えた。
また、笑恵館・ニッチ大学メンバーYS君やKH君、一宮庵の若者スタッフ、メゾンふき・共有メンバーのSS君やAKさんなど、すべてのプロジェクトに若いメンバーの受け入れが進んでいる。
彼らはすべて血のつながりは無いけれど、僕は勝手に自分の息子や娘と決め付けて、世話やおせっかいを焼いている。
少なくとも年末までは、そんな若者を探し見つけ、嚙みつきながら、みんなを「国づくりの仲間(家族)」にして、僕の思いや願いを託したい。
そして、残りの人生を彼らのサポートにささげたい。
そんなわけで、現在絶賛「子づくり」中、自称若者からのご連絡を待っている。