
僕は今、2つの株式会社に所属して、その立ち上げと許認可に深く関与した会社の常勤取締役と、その他すべての報酬と必要経費の受け皿となる「家族法人(なのに)」の取締役を担っている。
そして僕の業務内容は、様々な個人や組織の指導やサポートなので、業務として受託したり監事として所属することでその役割を果たしている。
だが、自らが主宰・代表するのは、一般社団法人日本土地資源協会ただ一つで、他の組織の代表や責任者を担うつもりは毛頭ない。
これはもちろん、僕自身の社会的な立場(ポジション)を明確にするためだが、それは対外的というよりもむしろ対内(自分自身)的に大切なことだと思っている。
もしも自分が二人いると、双方の利害が一致しない時に、どちらの自分を優先するかを決めなければならなくなる。
そんな場合に備えるには、複数の自分たちの関係性や優先順位を明確にしなければならないので、その手間を省くために僕は一つに絞り込む。
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そんな中、とある非営利法人の関係者たちの「利益相反(りえきそうはん)」に関する問題の渦中に僕はいる。
「利益相反」とは、信任を得て職務を行う地位にある人物(政治家、企業経営者、弁護士、医療関係者、研究者など)が立場上追求すべき利益・目的(利害関心)と、その人物が他にも有している立場や個人としての利益(利害関心)とが、競合ないしは相反している状態をいう。
例えば、人物Aが所属する組織Bの業務を自ら経営するC社に発注すると、Aは発注側と受注側双方に所属しているので、もしも片方の利益を追求すると他方の損失を招くことになるという訳だ。
だがこれでは、双務契約において一方の利益は他方の損害に基づくことになり、双方が得をするWINWINの関係が否定され、また相反でなく競合の場合でも、競合や競争を切磋琢磨する良い関係とする考え方も同様だ。
つまり、損得の善悪を規定せずに利益相反を悪とするのは、乱暴すぎると思うので、もう少し深く考察すべきだろう。
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例えば双方が得をする関係とは、寄付された側が金品を得て、寄付する側が社会的賞賛を得る場合。
これなら、自分が経営する会社Aから自分が主宰する団体Bに寄付をしても、何ら問題は無いだろう。
だが、たとえ社会的賞賛を得ても、金銭的損害が生じたら、それを問題視する会社Aの関係者から非難されるかもしれない。
つまり、相反や競合に起因する損害発生でなく、同一人物が利益と損失の双方をもたらすリスクを利益相反というのだろうか。
だとすると、盛んに論じられている企業団体の政治献金問題はどうだろう。
否定論者は、献金する側には必ず下心があり、受けた側が相手の便宜を図るのは当然だというが、肯定論者は全ての人には支持政党に献金する権利があり、その使途が開示されれば何の問題も無いという。
考えてみれば、これも寄付側の下心の有無と、政党側の贔屓の有無の問題で、そのリスクを排除するための廃止であれば、利益相反と似た意味合いと考えられる。
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そこで、利益という曖昧な表現はやめて、「リスク排除」と宣告したらどうだろう。
善悪や損得など、何らかの価値観に基づく反対概念は、一見明白のようで実は極めて曖昧だ。
この曖昧性こそがリスクであり、それを排除することを「利益相反」が意味していると考えたい。
自民、公明、国民民主の3党と、それ以外の勢力の対立は、まさに順法意識に関する水掛け論にしか聞こえないし、その是非を最終的に多数決で決めるなど、愚の骨頂だ。
そもそも、国全体の議論をすべき国会議員の大部分が、地方の選挙区で選出され、選挙区民の利益を担っていること自体、国と地域の公私混同であり利益相反の温床だ。
以前財政破綻した夕張市に招かれて、再建計画のお手伝いをした際に、年度末までに市民一人当たり400万円の債務を20年で弁済する計画を要求する菅総務大臣(当時)に対し、それなら国民一人当たり700万円の赤字国債を20年で弁済する計画を要求しようと提案したことを思い出す。
すべての人間が公と私(本音と建前)の2重人格である以上、このリスクを排除することは不可能だ。
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突然だが、先ほど映画「教皇選挙(CONCLAVE)」を見に行って、今日の答えを教わった気がする。
めちゃくちゃ面白い映画だったので、一切ネタバレする気はないが「信仰には疑念が必要だ」という一言が僕の胸に突き刺さった。
今日のテーマ「利益相反」の意味解釈を、「リスクの排除」でなく「リスクの疑念」に改めたい。
科学の世界で大切なのは「疑問」を持つことだが、宗教(信仰)においては「疑念」を持ち、ありのままの現実を歪める確信(主観的真実)を疑うことが描かれていた。
自分の思い描く真実と、関係者が共有する現実に乖離が合った時、あえて自分を盲信せずに疑念を持つためのキーワード(手掛かり)として、「利益相反」を位置付けたい。
なお、詳細については、是非映画「教皇選挙」を見て欲しい。