責任とは何か①

自民党が少数与党になったことで予算の審議に手こずっているが、「これこそが本来の姿であり、我々は真摯に臨みたい」と石破総理は胸を張る。
だが、一方では商品券10万円のばらまきや、政治資金の調達法など、およそ国民生活とは関係ない議論ばかりに終始して、やるべきことをできない政治に対し、責任論ばかりが叫ばれる。
責任問題の追及は、政治の世界にとどまらず、企業経営者からお笑いタレントまでその範囲に果てが無い。
そして何より性質が悪いのは、その論議が遅々として進展せず、さんざん長引いた挙句うやむやに忘れられて行くことだ。
だが、考えてみると、僕たちは「責任」について、その目的や方法をきちんと理解してるのだろうか。
少なくとも僕自身は、それをすらすらと説明する自信がない。
そこで今日は、「責任とは何なのか」について、知ったかぶりせずにおさらいしたい。

まず、辞書(大辞林)を引いてみると次の3つが示される。
1.自分が引き受けて行わなければならない任務。義務。「―を果たす」
2.自分がかかわった事柄や行為から生じた結果に対して負う義務や償い。「―をとって辞職する」「だれの―でもない」「―の所在」「―転嫁」
3. 法律上の不利益または制裁を負わされること。狭義では,違法な行為をした者に対する法的な制裁。
なるほど、責任は行為に関する一連の流れに沿って、「実行責任」「結果責任」「賠償責任」の3つのステップに分類できるようだ。
さらに言えば、これは「成功」でなく「失敗」に対する対処法で、「失敗しない責任」「失敗を認める責任」「失敗を償う責任」と言えそうだ。

これを確認するために、和英辞書を引くと、同じく3つの言葉が示される。
1. Responsibility(レスポンシビリティ):遂行責任
2. Accountability(アカウンタビリティ):説明責任
3. Liability(ライアビリティ):賠償責任
なあるほど、先ほどの3つのステップによく似た分類だが、明確に違うのが2番目の「結果責任」が、英語では「説明責任」に相当することだ。
確かにこの「説明責任」は曲者で、あらゆる場面で問われる割には水掛け論に終始するばかり。
国会でも「丁寧な説明」とか「分かりやすい説明」などが繰り返されるが、これはあくまで「理解させる責任」であり、「説明すべきこと」との乖離ばかりが感じられる。
この疑問を解くために、この3ステップを検証しよう。

まず、第1の責任は、Responsibility(レスポンシビリティ):遂行責任だ。
遂行とは、何もしていない状態から「とりあえずやってみる」のではなく、達成するまでやり遂げることを意味している。
先ほど責任は「失敗」に対する対処法と述べたが、「成功と失敗」はあくまで主観に基づく相対的なので、両者を含める「結果」と考えた方がよさそうだ。
そして、「成功と失敗」の判別がつかなければまだ途中を意味するので、「結果」とは「成功と失敗」の判定を下すことであり、それを以て遂行と言えるだろう。
もちろんすべての遂行は「成功」を目指すはずなので、遂行責任を果たすことは「成功」を意味している。
なので、「失敗」し「遂行責任」を果たせなかった場合に、2番目の「結果責任」が発生する訳だ。

さて、失敗という「結果がもたらす2番目の責任」を、英語では明確に「説明責任」というようだ。
そこで早速辞書を引くと「説明責任はAccountabilityの訳語」と前置きして次の3つが示される。
1.失敗を認める
2.相手の知りたいことを知らせる
3.原因と対策を説明する
そもそも「説明責任」が日本語になかったことに驚いたが、この3つを見ると、僕の推論つまり「失敗という結果に対する対処法」がほぼ正解なのでホッとした。
だが、「2.の事実関係」や、「3.の原因究明と再発防止」に関する議論は、盛んに行われていることを思い出すが、その前にまず「1.の失敗を認めること」が抜け落ちているのは明らかだ。
犯罪報道などで、必ず罪状認否つまり容疑者は犯行を認めているかどうかについてを初めに述べるのは、まさに犯罪者の説明責任の第一歩なのだと判った。

そして、3つ目の「賠償責任」は、失敗に対する「責任の果たし方」だ。
これについては専門的な議論は避け、僕の簡単な所見に留めたい。
結果説明が罪を明らかにするならば、賠償はそれに対する罰のこと。
失敗を認めるのが説明なら、謝罪するのが賠償だ。
もしも金銭や代物で弁済できるなら、謝罪や土下座よりそちらが優先することもある。
「民事責任」と「刑事責任」の分類は「賠償責任」に含まれて、先ほどの弁済が民事罰なら、懲役や罰金などが刑事罰に当たる。
さらに「道義的責任」とか「任命責任」の他にも「政治責任」「経営責任」など、およそ何でも「責任」が伴うが、これらはすべて「賠償責任」の範疇として、分野ごとの対処法が適用されるだろう。
いずれにせよ、初めに遂行を命じた人や組織に帰結すると思われる。

これでひとまず「責任の3段階」についてのおさらいは完了だが、同時に更なる「責任」が、いくつも思い浮かんでしまった。
というわけで、今日の話はここまでとし、続きは次回に委ねたい。