
僕は、「国」を「会員制のクラブ」と思っているので、「日本」という「国(クラブ)」が大好きだ。
もちろん、ここで生まれ暮らして来たので、ここしか知らないためでもあるが、戦争もなく安全で、今では外国人がたくさん遊びに来る「魅力的な国(クラブ)」であることは自慢できる。
そして、何よりも魅力的なのは、個人の所有権がしっかり守られていること。
特に「土地の所有権」については、その「使用、収益、処分の自由」が公共の福祉を前提にほぼ完全に守られていることに気付いた時は、むしろ驚愕したほどだ。
どんな権力も、たとえ総理大臣でも個人の土地に勝手に立ち入ることは許されない。
つまり、全ての土地が、その所有者を君主とする小さな国のように独立が尊重され、国や自治体は道路などのインフラや学校・病院などの公共施設を所有して、個人や法人が所有する私有地の経営や魅力づくりをサポートすることで税金という賃料や料金を課している。
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こうして日本という「国(クラブ)」は、様々なサービスを集約する都市化によってその魅力と価値を高めてきたのだが、それ以外の地域では過疎化と放置による衰退と荒廃が進んでいる。
日本の山林面積は約25万k㎡で、国土の約67%を占めており、これは先進国の中ではフィンランド、スウェーデンに次いで第3位に位置する山林率で、世界平均30%を大きく上回っている。
所有形態別にみると、森林面積の57%が私有林(個人や法人)、 12%が公有林(自治体)、31%が国有林となっているので、私有林面積は37万k㎡(国土面積)×67%×57%=141,303 k㎡となり、国民1.2億人とすると一人当たり1,177㎡の山林を所有していることになる。
日本国に所属する僕としては、この山林に興味を持つだけでなく、1,177㎡くらいの山林に関する権利と義務を感じるし、37万k㎡/1.2億人≒3,000㎡を一人分国土面積と感じてしまう。
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前置きはこれくらいにして、今日は「名栗の森オーナーシップクラブ」の法人化について整理したい。
「名栗の森」とは、祖母から相続したMOさんが個人で所有する飯能市名栗湖に接する約15万平米の山林のこと。
2016年にMOさんと出会った僕が「オーナーシップクラブ」の設立を提案したのは、まさにその内の1,177㎡が僕の持分のような責任を感じたから。
そこでオーナーMOさんを代表とする任意団体を設立し、LR(日本土地資源協会)が事務局を担当したが、すでにその時点で僕の目指すゴールは、名栗の森をMOさんの個人所有から法人所有に切り替えることだった。
国民一人当たりの面積は確かに1,177㎡だが、僕は山林を一人分ずつに細切れにしたいのではなく、その面積で割った人数分、つまり15万/1,177≒127人くらいの人が「自分の森」と思って良いはずだと考えた。
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このような「シェアでなく総有」を実現するには、所有の法人化が欠かせない。
これまで個人所有の実態は、天涯孤独の一人暮らしの人は別として、多くの人は土地や建物は家族で総有していた。
法的な所有者は父親でも、母親や祖父母、子どもたちなどの家族はすべて、実態としての所有者だ。
僕が個人所有を否定するのは、家族という組織が崩壊することによって総有できなくなったことによる。
なぜ集団による総有が必要なのかというと、一人では承継ができないから。
家族内の承継を前提とする相続制度を否定するのも、ここに理由がある。
同居はもちろん、近所に暮らす家族の崩壊は、土地に関する相続性の崩壊に直結していると僕は思う。
めったに会わない身内よりも、心の通い合う近所の他人とともに、盛り立てていきたいと願うのが笑恵館。
これが、すでに放置状態の山林に至っては、さらに深刻なことは明白だ。
ところが、山林所有を担う組織(コミュニティ)は、山林保護団体に限定され、国土の過半を担うにはあまりにも無力だ。
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そこで僕は、すべての国民(会員)に、山林所有の方法を提示し促進したい。
それが、山林所有を法人化し、誰もがその法人に所属することで山林を総有できる仕組みだ。
もちろん山林所有者もその法人に所属して、総有メンバーになることが前提で、所有者には山林を自分の法人に寄付してもらう。
なぜ売買でなく寄付なのかというと、僕が「所有の非営利化」にこだわるから。
山林の「所有と使用」を分けて考えた時、収益は「何もしない所有」でなく「働く使用」から得るべきだ。
我が国における所有者負担は、固都税相当の賃料だけなので、所有を非営利化して固都税相当の賃料で転貸すれば、使用者は所有者と同じ負担で使用できることになる。
LRは、所有する土地資源を固都税相当の賃料で使用者に賃貸し、その収入で納税する非営利法人を目指している。
種も仕掛けも無いこの単純な仕組みを、僕は日本中に広めたい。
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「名栗の森オーナーシップクラブ」の場合は、単独で法人に移行するのでなく、LRの事業として吸収することで合意した。
いきなり山林をLRに寄付するのでなく、笑恵館と同様に、LRが名栗の森を賃貸することからスタートする。
ここでの賃貸は「使用権賃貸」でなく、あくまで「所有のお試し」だ。
それより大切なことは、オーナーのMOさんがLRに入会して、当事者としての「総有メンバー」になることだ。
それはさながら、「LR家族の一員」になることで、他の笑恵館、一宮庵、ふきの庭などのオーナーと「他人の家族」になることだ。
僕が普及を目指す「土地所有法人」とは、土地を法的に総有する家族のようなコミュニティのことなので、別名「土地総有家族」と名付けてみたい。