突然だが、今日は認可地縁団体について話したい。
現在とあるNPO法人のプロジェクトで、活用している廃校(旧市立小学校)の校庭に交流施設を建設しようとしているのだが、その市役所に敷地の提供を相談したところ、廃校そのものを「NPO法人に賃貸する」と、「町に譲渡する」のいずれかにして欲しいという。
これに対し、当事者たちは一気に混乱した。
「賃貸と譲渡」という選択肢ならまだ理解できるが、「まちとNPO法人」の「まち」が意味不明だ。
確かにそこは、登記簿上、もしくは住居表示上「W市F町」となってはいるものの、「F町」は自治体でなく単なる呼称に過ぎないはず。
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自治体としては、廃校を活用してくれるのは有り難いのだが、土地建物を所有するには当然コストがかかるので、それを補填する賃料収入を得るか、むしろ地域に譲渡して所有責任から逃れたいらしい。
だが、「町」の実態もしくは当事者が分からない以上、この「譲渡案」は検討すらできない。
縁あって、このプロジェクトを側面から支援していた僕にとって、この問題はまさに興味のど真ん中だ。
この報告を受けた僕は、知ってる範囲で即座に「町への譲渡」のあらましを説明したが、これから市役所との折衝に入るにあたり、理論武装と言うか当事者が理解できる知識の共有が必要だ。
そこで、今日はこの場(ブログ)を借りて、僕自身の頭の整理をしたいと思う。
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まずはwikiからの受け売りから始めよう。
認可地縁団体(にんかちえんだんたい)とは、日本の行政用語で、自治会、町内会等広く地域社会全般の維持や形成を目的とした団体・組織のうち、地方自治法などに定められた要件を満たし、行政的手続きを経て法人格を得たものを指す。
つまり、「法人格を持つ町内会」のこと。
日本では従来、町内会(町会、自治会など)は法人ではなかったため、町内会が所有する不動産(自治会館など)は代表者の個人名義や役員の共有名義で登記が行われていたが、これでは、代表者・役員が変更された時などに不都合があった。
そこで、1991年4月に地方自治法が改正され、町又は字の区域その他市町村内の一定の区域に住所を有する者の地縁に基づいて形成された団体(地縁による団体)は、地域的な共同活動のための不動産又は不動産に関する権利等を保有するため市町村長の認可を受けたときは、その規約に定める目的の範囲内において、権利義務の帰属主体となることができるようになった。
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ここで注目すべきは、「代表者の個人所有や役員による共同所有」が永続性を阻害するという発想だ。
これは、1998年の「特定非営利活動促進法(NPO法)」や、2006年の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」など、後に制定される法律によってもしっかり引き継がれ、財産を共有するまさに「コミュニティ」の存立根拠となってきた。
民主化の名を借りた個人主義が個人所有を促進し、相続制度が更なる細分化を助長する。
その上、せっかく封建家族から解放されたのに、相続制度に縛られて、親族(子)による継承が求められる。
財宝やお金ならいくら分割しても構わないが、土地や事業は細切れにすべきものではなく、組織による継承が欠かせない。
そもそも地域社会(集落)とは、土地と事業が自給自足で自立する範囲であり、その存続を図るため土地の細分化(田分け)や売買(売国)は忌み嫌われた。
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ちなみに法第260条の2第2項に定める認可地縁団体の要件は、
1.良好な地域社会の維持等に資する地域的な共同活動を目的とし、現にそれを行っていること
2.その区域が客観的に定められていること
3.その区域の個人は、構成員となることができ、現に相当数が構成員となっていること
4.規約を定めていること
の4項目で、2や3がまさに「地縁組織」の特質を表している。
チョット余談だが、以前世田谷で三宿R420商店会を立ち上げた際、区の担当者から条件として「範囲を定め、範囲内の全ての事業者が参加可能であること」と告げられたことを思い出す。
さらに、4.の規約に定めるべき事項としては、①目的、②名称、③区域、④事務所の所在地、⑤構成員の資格に関する事項、⑥代表者に関する事項、⑦会議に関する事項、⑧資産に関する事項、と定められ、「③区域」の定めが求められる。
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そして一番大切なことは、1.の末尾にある「現にそれを行っていること」だ。
つまり、この法人は新規に設立するのでなく、既存の地域コミュニティに法人格が与えられるに過ぎない。
したがって、土地や財産の所有など、権利主体となるために上記の条件をそろえれば、費用もかからず登記もいらない。
つまり、市町村などの基礎自治体の子会社的な、まさに「民営の自治体」と言えるだろう。
また、以前の認可要件には、不動産や不動産に関する権利の保有、または保有を予定して、認可申請書に添える書類として保有資産目録や保有予定資産目録の提出が求められていたが、2021年には撤廃され、さらに2023年には、同一市町村内の他の認可地縁団体と合併することができる規定が創設された。
こうした改定は、地域的な共同活動を円滑に行うために他ならない。
まさに、小さな国づくりの仕組みが、整備されつつあったことに、僕はあらためて気づかされた。
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これまでの僕は「町会」のことを、かつて地域社会を担ってきた封建的な村社会が、民主化によって崩壊した「残骸」くらいに思っていた。
その歴史を振り返ると、村八分と言われるような掟に縛られ、五人組組織の逃れられない監視体制がついに隣組と呼ばれる戦争協力体制に転化した。
戦後民主化により、1947年5月3日いわゆるポツダム政令15号が公布され、「町内会」「部落会」やそれらの「連合会」等の結成が禁止されることになったが、その後サンフランシスコ講和条約の発効に伴い、ポツダム命令は講和条約発効半年後の1952年10月25日に失効したため、自治組織として再組織化されるようになった。
その後は市町村(基礎自治体)の下部組織として、ごみ集積所の管理、交通安全活動、防犯見回り、清掃緑化活動など各種の生活改良活動を担い、昭和期の地域の生活改善に大きく貢献したが、多世代が共に暮らす標準家族は崩壊し、地域社会の職住分離(分業化)が進むにつれて、町会への加盟率は低下し続け、その存在意義は失われつつある。
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こうした現状認識の中で、認可地縁団体という制度を活かすことに、僕は着目したいと思う。
僕はこの制度から、「民による自治」を目指す意思を明確に感じるが、同時にその思いを共有できる人がほとんど見当たらない危惧も感じる。
これまでの歴史と反省の元に、生み出された制度の目的がどんなに分かりやすく明確に書かれていても、その期の無い人には決して理解されないことを僕は知っている。
なので、やるべきことは明確だ。
僕はこの制度に則り、町会と言う地域の既存コミュニティの法人化に挑んでみたい。
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