現場の答えは当たり前(上海)

12月22-25日に、上海に行ってきました。

僕はそれほど頻繁に外国に行くわけではありませんが、上海だけはご縁があり、今度が5回目の訪問です。

あえて何度も訪れた街を選んだのは、初体験の発見や驚きよりも、知っているようで気付かずに見過ごしがちな、日常の暮らしの中での日本との違いや違和感を体感したいと考えたからです。

現地で暮らす義妹夫婦にもその旨を伝え、普段の暮らしで訪れる場所を中心に案内してほしいと頼んだところ、快く引き受けてくれました。

こうして、同行した大阪の建築家Iさんと私と義妹夫婦の4人で歩いた、クリスマス商戦真っただ中の「上海見聞録」の一部をお届けします。

上海に到着し、初めに気付いた違和感はNet環境です。

中国では、Facebook、google、LINEがほとんど通じないことは事前に承知していたので、中国版LINEとでもいうべきWechatを用意していったのですが、それでもこれらが使えない違和感は強烈でした。

撮った写真を投稿する先がない・・・というストレスが、禁断症状のように襲ってきます。

普段は、さほど頻繁に投稿しませんが、外出先の様子など画像や動画で投稿するのが習慣化していた自分に気付きました。

そしてgoogle検索や位置情報確認ができないこと。

街歩きに際し、地図情報は欠かせないので、現地の類似サイト「百度地図」をダウンロードしました。

その後、地下鉄だけでなく路線バスも駆使する義妹のスマホをのぞき込むと、交通、食事、買い物など目的別に地図ポータルを駆使している様子がわかります。

これは、国民性というより世代間のギャップかも。

Googleを百科事典的に使い脱線情報を楽しむ僕と、各種専門書を瞬時に使い分け即座に答えを探し出する人たちとの情報操作法の違いでしょうか。

街を歩くと、これまでの訪問との「騒音の違い」に、すぐ気づきました。

「ブーブー」という自動車のクラクションの音はほとんど聞かれず、甲高い「ピーヒャラ」という音を出しながら、電動自転車が「シャー!」とほぼ無音で疾走していきます。

電動自転車は免許も不要で価格も3万円程度からどこでも売っていて、寒い季節は手袋と防寒着だけでなく、多くがハンドルに「防寒布団」をセットして走っています。

僕も欲しくて方々探しましたが見つからず、帰国後ネット販売していることがわかり義妹が購入してくれましたが、価格は750円ということで、どんな代物が届くか楽しみです。

また、2日目に乗せてもらった車にドライブレコーダーが装着してあったので、普及しているのかと尋ねたら、交通事故で身を守るために必須だとのこと。

中国では、道で倒れている人にうっかり手を差し伸べると、犯人扱いされて金銭を要求されるなど過激な民事トラブルが多く、うっかり人助けもできず、警察の現場検証もかなり厳重だそうです。

日本人の人助け精神は素晴らしいと思いつつ、かなり無防備であることも否めないと感じました。

街中を歩いていると、そこここに「大画面テレビ」が使われていることにも驚きました。

地下鉄の通路が一面大画面テレビだったり、ショッピングモールの入り口周りが全面ディスプレイだったり、果ては外灘から見える超高層ビルの全面がディスプレイになっていて、上海の夜景はどこもかしこも動いていて、「テレビ」が日本のお家芸だったのは遠い昔のことに思えます。

またホテルに帰ると部屋のテレビの68チャンネルはすべて中国語放送で、NHKやCNNは見当たりません。

その上情報チャンネルに切り替えると、ジャンルごとにニュースのアーカイブ検索ができるようになっていて、

番組の内容や質についてはよくわかりませんが、そのコンテンツが豊富なことは明らかで、日本のテレビコンテンツの貧しさを実感しました。

大型書店を訪れた時にも、児童書や芸術分野における中国語書籍の豊富さを目の当たりにし、同様の印象を持ちました。

日本語はもちろんのこと、英語ですら完全にわき役になっていることに驚きました。

そこここで大規模再開発が行われているのも、東京では見られない光景です。

そもそも1街区の大きさが日本よりも巨大で、古い租界エリアを歩いても4から10階建ての老朽アパートが立ち並び、昔から高度に都市化していたことがうかがえます。

ですから、工事現場の大きさが桁違いで、開発が進むごとにまちの景色が一変してしまいます。

数年前にあったはずのまちが消えて無くなっているのを見ると、今歩いている街並みが数年後には消えてしまうのだろうと感じます。

駅前のショッピングモールの中の巨大スーパーを1時間半かけて探索しましたが、考えてみると東京の都心にはこんな巨大スーパーはありません。

渋谷や銀座エリアで進む大規模開発も、ここに比べれば小さな開発にすぎず、東京でも本当の再開発が始まればすべて吹っ飛んでしまうような気になりました。

Net環境、中国人気質、中国語メディア、大規模再開発、いずれも事前に知識として知っていたことばかりでしたが、実際に目の当たりに体感することにより、それらが「答え」として腑に落ちるのを感じました。

そしてまた、ひとたび腑に落ちてしまうと、それは二度と疑問として頭をもたげることなく、次の疑問へと駒が進んだのを僕は感じます。

振り返ってみれば今回の旅は、「この感覚」を確かめたくて出かけたような気がします。

納得のいく答えとは、いつだって当たり前の答えです。

「正しいから」というよりは、「言い訳や反論ができないから」納得せざるを得ないのかもしれませんが、だからこそ現場に赴き、現実を確認したご褒美にも思えます。

知っている答えを「当たり前」のこととして、更なる道の答えを探すために、今年は一層皆さんの現場を訪れたいと思います。

どうか気軽にお誘いくださいますよう、お願いいたします。