「起業」とは、お金を使わないチャレンジのこと・・・というのが僕の持論だ。
その理由は3つある。
まず第一に、お金を使うためにはお金を調達しなければならない。
開業資金や元手を稼がないと起業できない・・・と思いこんでいる人は、やがてお金を調達できないことを起業できない理由にしてしまう。
起業で大切なことは、できない理由を作らずに、実行することだ。
次に、お金をかけると失敗時の被害が大きくなる。
そのお金が苦労して貯めた貯金であればもちろんのこと、借金だったらさらに大変だ・・・と考えるようになれば、おのずと失敗を恐れ、大胆さを失うことになる。
起業で大切なことは、自由に伸び伸びとやることだ。
そして三つめは、お金を使うことで他人の力を当てにしてしまうこと。
僕は、これが一番深刻だと思う。
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そもそもお金を使うのは、自分でできないことをやるためだ。
材料を買うのも、人を雇うのも、電車に乗るのも他人を当てにするからお金がかかる。
自分で材料を拾い集め、自分ですべてを行い、自分の足で歩いていけば、お金はかからない。
僕は別に「物を買うな」とか「電車に乗るな」と言っているのではない。
ただ、物を買ったり電車に乗るのは「起業ではない」と言いたいだけ。
そんなことはあなたでなくてもできること、お金さえ払えば誰にでもできることを、僕は「起業」とは呼ばない。
もしかすると電車に乗ることは、あなたにとっては初めてのことかもしれないが、それは起業でなく創業だ。
ほんの一部でもいい、自分自身でやる部分のことを「起業」と定義したい。
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「お金を使わない起業」の価値は、「原価ゼロ」ということだ。
これを販売すれば、絶対に利益が出る。
考えてみれば、すべての原価は人件費だ。
人間以外のモノや生き物は、ヒトが関わらなければすべて無料で、自由に使える。
お金がかかる唯一の理由は、そこに関わる人間がお金を要求するからだ。
その人たちは、無料で手に入れた資源に値段をつけて売っている。
僕の言う「起業」とはこのことだ。
ビジネスの基本は、自分の身の回りにある無料の材料に価値を付けて売ることだ。
もしもそれが無料でなければ、その原価にさらに価値を上乗せして販売する。
そのとき、「自分の力で上乗せした分」こそが、あなた自身の商品だ。
所詮付加価値とは、自分の力でゼロから生み出さなければならない。
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もちろん原価ゼロで商品やサービスを生み出すのは簡単ではない。
だが、難しいからこそ価値がある。
簡単にできることなら、誰もが自分でできるから、商品やサービスは必要ない。
他人にできないことをやるからこそ、それは対価に値する。
確かにお金を払うことで、自分にはできない難しいことができるようになるだろうが、それは正確に言えばできるようになったのではなく、やってもらっているだけのこと。
「飛行機に乗れば空を飛べる」ではなく、「空飛ぶ飛行機に乗せてもらっている」に過ぎないことを忘れてはいけない。
お金を払うということは、お金の力で「何かができる」のではなく、「何かをしてもらう」にすぎないと僕は思う。
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ビジネスの継続とは、顧客に選ばれ続けること。
そのためには、トップ(一番)になるか、ユニーク(唯一)になるかのいずれかだ。トップになれるのは一人だけということは、多くの人はユニークなビジネスを生み出さなければ生き残れない。
そのために、「自分にしかできないこと」かどうかは別にして、「自分しかやらないこと」を持つことが大切だ。
しかし、「自分しかやらないこと」は、お金の力では実現しない。
「お金でできること」とは、所詮「お金を払えば誰にでもできること」だからだ。
だからビジネスはお金を使わずに生み出し、試すこと。そして、顧客から求められるようになった時、お金を使って拡大し、加速すればいいと思う。