先日笑恵館をニュース23で取材してくださったTBSのMさんのご紹介で、4月10日に「シェア金沢」を訪れました(http://www.share-kanazawa.com)。
ここは、日本版CCRCの先行事例として安倍首相や石破地方創生相が視察に訪れ、今や全国から注目の的となっていますが、現地を案内してくださった奥村施設長によれば、「私たちはCCRCを目指したことはなく、政府が勝手に騒いでるだけ」とのこと。
「でも、せっかく注目していただいたからには、皆さんに見てもらい、真似して欲しい」ということで、丁寧にご案内いただきました。
「人が直につながり、支えあい、共に暮らす街」を目指し、「福祉」の概念に縛られることなく、大胆と堅実を兼ね備えたしなやかな事業に感嘆すると同時に、その限界も目の当たりにしてきました。
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CCRC(Continuing Care Retirement Community)とは継続的なケアを受けられる高齢者の地域共同体を指す米国生まれの言葉で、健康なうちから移住し、医療や介護を受けながら活動的に暮らす終の住みかと位置づけられています。
2015年末、首都圏に住む50代以上を地方へ移すべきだとする日本創成会議の最終報告を受け、政府が必要な法整備に入りました。
高齢者の移住候補地として北海道函館市、富山県富山市、和歌山県和歌山市、香川県坂出市、佐賀県鳥栖市など33地域、介護施設の追加整備で受け入れ可能になる準候補地として岩手県盛岡市、山口県下関市、長崎県長崎市など8地域が挙げられていますが、政府は日本版CCRCを「生涯活躍のまち」とし、地方創生の柱の1つに位置づけ、シェア金沢をすでにその実現を果たしつつある先行事例として位置づけたわけです。
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しかし、政府のビジョンとシェア金沢の根本的な違いは、高齢者の位置づけです。
シェア金沢は、戦後荒れ果てたお寺の廃屋で始めた戦災孤児の救済事業を、心身障害児の地域療育事業という福祉事業に移行することで、地域社会の中で子供を育てる仕組みを育んできました。
日本版CCRCが別名「平成の姥捨て山」と揶揄されるのも、まさに高齢者主体の地域社会そのものに対する疑問の表れでしょう。
我がLR活用事業においても、「助産院」を一つの事業コアに据えたのは、「高齢者は地域の原動力にはなり得ない」と考えたからです。
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では、シェア金沢は何を目指すのか・・・という問いに対し、奥村施設長は明確な答えを見せてくれました。
それは、シェア金沢の原型ともなった「西園寺(http://www.bussien.com/saienji)」というプロジェクトです。
ここは石川県小松市野田町というわずか50数件の集落にある古寺で、住職不在のため宗門から廃止を言い渡されたのを、地域住民からの要望を受け、地域参加型の障害児養育施設として運営しています。
施設に併設された温泉は地域住民に開放され、本堂は昼間はデイサービス、夜は居酒屋とフル稼働。
平成20年の開業以後、地域の定着率は改善し、現在では14世帯が新規転入定着したそうです。
小さな集落ではありますが、施設が地域の核となり、その活力源となりながら、そこで福祉が実現する・・・シェア金沢は明確にこのビジョンを目指すと彼は断言してくれました。
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こうして、福祉施設に民間ビジネスを付加しながらのスタイルが、シェア金沢でも踏襲され、障害児や高齢者も共に働く「まちのような施設」が実現しています。
そこで同行したSさんが「要介護になった母上がここで暮らせたらどんなにいいだろう」と思いを募らせ、事務局に相談すると、「当施設は要介護者の受け入れはできません」とビシャリ門前払い。
帰路の車中で「シェア金沢、がっかりだわ」とぼやいていました。
確かに素晴らしい「まちのような施設」であることは間違いありません。
でも、僕たちが作りたいと目指すのは、たとえ「施設」だとしても「施設のようなまち」なのだ思います。
「条件を満たした施設」には補助金が出ますが、「無条件ですべての人を受け入れるまち」は、補助金に頼らず自分で作るしかないことを、あらためて認識しました。