青木淳さんの講演会

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先日、友人の建築家「青木淳氏」の講演を聞きに水戸芸術館に行ってきました。そもそもは新潟県十日町市に「ブンシツ」を訪ねたのがきっかけで、今回も青木さんからでなくブンシツのスタッフのお誘いでした。

磯崎新アトリエ時代にこの水戸芸術館を担当したことから始まり、潟美術館、青森市立美術館などの作品から十日町の公民館に至るまで、青木さんの頭の中ではずっと一つの流れを辿ってきたという話を、僕は今回初めて聞いてとても共感しました。特に印象に残ったのは「やってみなけりゃわからない」。建築は頼まれたことに対する答えを提示し、それを形にするのだけれど、初めに提示した答えを実現する過程で日々新たなことに気付くのだから、答えは常に変わり続け、実は完成などあり得ないと。

美術館で展示をするために行う設営を、展示終了後に現状復帰するのでなく、次の設営はその上に「更新」していくべきではないか。演奏や演劇の本番のために時々使う立派なホールを「普段」みんなが使うにはどうすればいいのかを考えるべきではないか。建築が社会に対して果たすべき機能を、制約なしに自由に考える青木さんの言葉は、専門用語を一切交えない平易な言葉で綴られていました。

そして極め付きは「十日町ブンシツ」です。仕事自体は町中のオンボロビルのリフォームですが、何をするか決めるところからの仕事でした。現地で元パン屋の空き店舗を借りて出先事務所(分室)とし、近所の人に開放し、そこに集うコミュニティを育てながら、最終的にそのコミュニティの人たちがリフォームにも関わりその後も施設を作り続けて欲しいというもの。仕事をするための仮事務所
が主役となり「ブンシツ」というプロジェクトになったとか。先日ブンシツの向かいの古家が火事になり、今焼け出された家族がなんとこのブンシツ(現場事務所)に仮住まいしているそうです。まさに「やってみなけりゃわからない」。僕が取り組むと同じルーツを感じました。

質 疑応答の最後、僕の顔を見て気まずそうな青木さんに「青木さんはどんなクライアントからどんなことを頼まれてみたいですか?」と尋ねたら、「本当に困った人で、できればおカネのある人」と笑って答えてくれた。きっと施工者を困らせるわがままな建築家とレッテルを張られているだろうが、建築家は施工者を楽させるためにいるのではないはずだ。僕も自分にしかできないことを明確にし、「本当に困っているお金のある人」から頼まれる仕事人になりたいと思いました。