B10.起業編

起業編で学ぶのは、「事業目的が実現した時のこと」を自分の頭の中で考えるやり方です。もしもあなたが、始める前から「それは無理」というなら、それはあなたにやる気がない証拠。まずはその点を自分に問いかけてみてください。当面「実現する気のない目的」は、この塾では取り扱いません。必ず「実現を前提とする目的」を用意してください。

次に必要なのは、「実現した時の頭の中の様子」を知ることです。実際に目的が現実になった後なら、誰だって自分が目指してきたものを明確に説明できるはず。そして何を尋ねられても、すらすらと答えられるはずです。ところか、まだ考え始めたばかりでは、そのイメージはあいまいで不足だらけです。そこで役立つのが5W1Hと言われるwhy、what、how、who、where、whenの6つの疑問詞です。わからないことは何でもこれで仮置きすれば、大概の文章は作れます。自分の説明文の不足部分を、まずは疑問詞で補ってみましょう。

僕は、6つの疑問詞を次の2つのグループに分けて使います。

1.whoだれ、whereどこ、whenいつ
2.whyなぜ、whatなに、howどうやって

まず1番目のグループの疑問に対する答えは、人間、空間、時間となり、これらは「世界のこと」を表す言葉だとわかります。実際に、「いつ・どこで・だれが」の3つがそろえば、現実世界のことはすべて客観的に説明できます。これに対し、2番目のグループは、「なぜ」の答えは「理由」、「なに?」の答えは「名称」、「どうやって?」の答えは「方法」で、これらは一つの答えではなく人によって様々に異なる「自分のこと」を主観的に表す言葉です。

このように、現実世界を説明するには、世界そのものを示す「人間、空間、時間」だけでなく、その「理由、名称、方法」が必要です。ですが、これらを一度にそろえるのは至難の業で、そんなことができる人などめったにいません。そこで、すべてを一度に答えるのでなく、できるところから答えを埋めていきます。埋める答えは適当な、あてずっぽうで構いません。答えを埋めたらそれをじっくり読んで、イメージを膨らませ、それでいいかどうかを自分の心に尋ねます。

その判定ができるのは、世界にただ一人あなた自身しか存在しません。このやり方の良い点は、一人で閉じこもらなくても、仲間とワイワイやることも、僕とメールでやり取りしながらでもできることです。誰が見つけた答えだろうと、その適否を判断するのはあなたです。あなたがよいと言えばよし、ダメと言えばダメです。こうすれば、答えが出来上がるのは時間の問題です。

この起業編では、下記の5回に分けて5W1Hの構造をご説明します。


 

B11.what:具体と抽象

世界の疑問を整理する「道具=5W1H」の話 

  1. 思考と名詞(what)
  2. 感覚と形容詞(why)
  3. 行動と動詞(how)
  4. 人間と主体(who)
  5. 空間と状態(where)
  6. 時間と変化(when)

ワークショップ    経営ビジョン演習

B12.why+how:理系と文系

目的(WHY)・手段(WHAT)・方法(HOW)の関係の話 

  1. 具体と抽象(what)
  2. 理由と目的(why)
  3. 原因と結果(how)
  4. 自と他(who)
  5. 全体と個(where)
  6. 過去と未来(when)

ワークショップ    企画シート実習

B13.who:人間と相手

WHO「だれ」によって決まる、人間の世界の話 ビジネスの人間関係

  1. 能動と受動(what)
  2. 欲求と満足(why)
  3. 攻めと守り(how)
  4. 丁寧と尊敬(who)
  5. 利害と損得(where)
  6. 評価と報酬(when)

ワークショップ    ビジネスの人間関係

B14.where:空間と部分

WHERE「どこ」によって決まる、空間の世界の話 

  1. カタチと中身(what)
  2. 必要と十分(why)
  3. 不足と余分(how)
  4. 内と外(who)
  5. 同じと違い(where)
  6. 質と量(when)

ワークショップ    ビジネスの見せ方

B15.when:時間と現在

WHEN「いつ」によって決まる、時間の世界の話 

  1. 思いと現実(what)
  2. 経験と願望(why)
  3. 実績と予想(how)
  4. 前と後ろ(who)
  5. 初めと終わり(where)
  6. 速度と頻度(when)

ワークショップ    ビジネスの物語


 

もちろん、それぞれの内容は「why、what、how、who、where、when」を用いて説明します。
・・・だんだんややこしくなってきましたね(笑)。

「言葉」は、世界と自分の関係を説明するために人間が作り出した最高の道具です。考えるための言葉「疑問詞」を手掛かりに、世界の構造を探りながら、自分で新たな世界を構築するヒントを模索します。

ここでお話しすることは、すべて僕が自分で考えついたことで、誰かに教わったことは一つもありません。だからそれらは、何一つ目新しいことでなく、すべてあなたが当たり前のこととして知っている内容に違いありません。でもあえて、それらを順に説明しますので、あなたの事業目的を題材にしながら確かめてください。きっとあなたの頭はくたくたになると思います。でもそうすれば、あなたの事業目的は、理屈編の終了と同時に完成することをお約束します。

その答えで良いかどうかはあなたにしかわかりません。その答えが実現するかどうかは、やってみなければわかりません。そして、それが成功かどうかも、本当はあなたにしかわかりません。しかし問題はそのあとです。そうして出来上がったあなたの事業目的が、本当にあなたの実現したいことなのか、あなた自身が判断します。そして、実行に移すのか、手直しするのか、取りやめるのかを決めることです。なぜなら、あなたの本当の思いは誰にもわからないから。そしてまた、あなたの判断が正しいかどうかも、あなた自身でさえわからないかもしれないからです。

大切なのは、事業目的に込めた思いを、すべて言葉にして説明することです。この説明があなたを離れても自立して一人で歩きだし、あなた自身ですらその目的に従うようになった時、それは現実になっていきます。それを堂々と行い、本気で取り組む姿勢を見せることが大切です。