B08.Xデイ(計画倒産)

平成11年7月2日の情報開示以後、1度の定時支払と2度の手形決済をおこなった。その都度、興信所などから「○○日が御社のXデイかという問い合わせがあるのですが、どうなんですか?」という電話がかかってきた。私は「その時が来たらきちんと発表します」と答えたものの、本当はよく分からなくなっていた。「会社は潰れるが、仕事は続ける」と言った私の言葉は、当初は相手にされなかったが、次第に現実味を帯びてきた。仕掛かりの工事は全て別会社に契約を移し、我々はその下請となって現場を守っていた。換金できる資産は全て売却し、ついに従業員も全員解雇したが、会社はまだ業務をしていた。

最期の手形決済をした翌日には、下請各社から「本当にありがとうございました。」という電話が相次いだ。すると、元社員達はこう言いだした。「うちのXデイはいつなんですか?」、「うちはいつ倒産するんですか?」と。東京商工リサーチ社の担当者が、この問いに答えてくれた。「【倒産】と言う言葉は、弊社が作った言葉で、正式な経済用語ではないんです。企業は誰かが【整理】しない限り、存続するのです」と。私は不思議な気持ちになった。「不渡を2度出したら倒産」と誰しもが思いこんでいるが、これは単に銀行取引が停止されるにすぎない。手形を振り出さない会社であれば、不渡もない。つまり、第3者から破産させられない限り、企業の命は自分で決めるものなのだ。

私は自ら死ぬ気はないが、もう支払いは出来ない。そこで、急遽「債権者説明会」を開催して皆さんの意見を聞くことにした。やることは2つ。清算B/Sの作成と通知の発送だ。資金繰りの話は以前にしたが、この最期の資金繰りは、「会社が潰れた場合のB/S」だ。つまり、簿価で計上されている資産を、売却あるいは回収した場合の金額に置き換えていき、現時点で会社を整理したときに債権者に幾らくらいの配当が見込まれるかを計算するのだ。楽観的な数字は排除していくと、一般債権の配当率は1%を下回った。厳しい数字だが、これこそが、倒産を意識していなかったときには見ようともしなかった、会社の本当の姿なのだ。

その翌日から債権者からの問い合わせや来社が始まった。真っ先に怒鳴り込んできたのは、銀行だった。「これは一体誰の作った筋書きなんだ。完全に計画倒産じゃないか!」「こんな話は今まで聞いたことがない。銀行を騙したな!」と、担当者はものすごい剣幕だ。しかし私はこう答えた。「筋書きどころか、私だってこんな経験は初めてです。だからこそ、今まで全てお話しし、ご相談してきたのです。【計画倒産】とおっしゃいますが、世の中に【無計画倒産】等というものがあるんですか?。懸命に考えてきた結果がこのざまなんです。申し訳ありません。皆さんに今後のことをご相談するのが今度の説明会です」。

一方、一部の下請業者の方たちは、むしろ逆のことを言ってきた。それは「いつまで生きているんだ。早く潰れてくれ。さもないと、協力したくてもできないし、未収金も損金に出来ない。」とか、「きちんと潰れてくれないと、倒産防止共済の資金も使えないじゃないか」という生き残りをかけた経営者達の叫びだった。

私は、人間としては自ら死ぬことは出来ないが、企業としてはその生死を決めなければならない。だからその日を決めた。「Xデイ」とは「何かが決まる日」だとわかった。

今回はここまで。次回は「キーワードその8:取り立て、暴力団」についてお話しします

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