A14_3.how:不足と余分

あらかじめ描いたイメージを実現するためには、現状と実現イメージの違いを見つけ、その違いを修正しなければなりません。空間はカタチと中身で説明できますが、カタチは中身で出来ているので、必要な場所に必要な中身があればイメージ通りのカタチができるはずです。したがって、イメージ通りの空間とは「必要な場所に適切な中身がある状態」であり、その実現の方法は「必要な場所に適切な中身を加え、余分な中身を取り除くこと」、つまり「足すと引く」の組み合わせです。もしも庭を菜園にしたければ、植木や芝生を取り除き野菜を植えれば良い。たとえ大切に育ててきた植木や芝生だとしても、それはもはや無用の長物にすぎません。しかしそれはなぜなのか、大切なものがなぜ突然いらなくなってしまうのか。

 

そもそも庭の植木や芝生には何の問題もありません。全ては「そこを菜園にしたい」と願ったことが始まりです。実現の方法は「足すと引く」なので、実現前の現状は「何かが不足し、何かが余分」のはずです。この場合、「菜園」にするためには「野菜が不足し、芝と植木が余分」となってしまいました。このように、実現のためには実現イメージと現状を比較して「不足と余分」を見つけなければなりません。事前にイメージがないと実現できないのは、まさにこのためです。私たちが探すべきものは「現状が抱えている問題」でなく「実現に必要な過不足」です。例えば、小さな庭を菜園にするなら、庭を潰して菜園に作り直す必要がありますが、広い庭であればその一部でも十分かも知れません。このように、実現に際しては必要と十分の双方が大切です。菜園を作ることと庭を潰すことは違うことです。余分なのは庭ではなく、例えば駐車場かも知れません。

 

必要とは「それが無ければ実現しない」ということですが、十分とは「それさえあれば実現する」ということです。ですから、実現を目指すならこの「十分」を見つけることが何よりも重要です。でも私たちが求める実現は、「菜園を作る」のような簡単なものではなく、むしろ前例のない難しいものを覚悟しなければなりません。しかし同時に、難しいということは必要条件を満たすことが困難であることを意味します。社会には、いくら必要なことをコツコツ積み重ねても、一向に解決しない課題がたくさんありますが、私たち自身も似たような堂々巡りを繰り返しているのかもしれません。そこで私は、あえて十分条件を探すことをお勧めします。本気で実現したいなら、必要条件を並べるのでなく、一つの十分条件を見つけるべきです。それは「事例」です。もしも世界のどこかで、あなたの目指すイメージが実現していたなら、それを指して「ああなりたい」と言えばいいんです。

 

空間とは世界のこと。空間を作るとは、世界を作ることです。もしもあなたが自分の望む世界を作りたいのなら、それは世界のどこかにあるはずです。そのものズバリで無いにしても、いくつかを合わせたもの、何かを小さくしたものなど、その手掛かりは必ずあるはずです。そしてその中にあなたのやりたい何かが必ずあるはずです。私たちは、見たことも聞いたことも無いどこにも無いものを求めることはありません。そんなものはイメージできないので、求めようもありません。さらに言えば、私たちが求めるものは「一つ」です。一見たくさんあるように思えても、それらは何か一つのものを説明するために並べられているだけで、その全体は一つのことを示しているはずです。「空間は全体であり一つである」というのはそういうことです。私たちは一つのことを示す言葉が無いからたくさんの必要条件を並べているだけで、言葉さえあればそれらを一言で言えるはずです。「菜園」を簡単だと言いましたが、「菜園」という言葉が無ければその説明は大変です。実は「菜園」が簡単なのではなく、その言葉があるから一言で言えただけのこと。

 

実現とは、複雑に見えるイメージを一つの現実にすることです。

私たちは、一つのことを的確に言えず、難しくしているに過ぎないのだと、何かを実現するたびに思います。

コメントを残す