A12_4.人間と答え(who)

自分のやりたいことは「なぜ(why)」と「どうやって(how)」を使えば説明できるのですが、これを実現するとなると、頭の中で思い描くだけでなく、実際の世界に当てはめていかなければなりません。ところが、現実世界は複雑で、一体どこから考え始めればいいのか、途方に暮れてしまいます。そこで、世界を「人間・空間・世界」の3つに分け、一つずつ具体イメージを作ることで手掛かりを探します。すでにお話ししたとおり、私たちは実際の世界を人間(who)と空間(where)と時間(when)の3つの要素で理解しているのですが、頭の中では3本の紐のようにそれらが立体的に絡み合い、まるで一つのこととして処理されています。知っているのに説明できないとはそんなイメージです。説明できるようになるために、1本ずつ絡んだ紐とほぐしてみたいと思います。

 

人間とは「だれ(who)」のこと。理系でいう「動物としてのヒト」でも、文系でいう「歴史上の人物」でもなく、自分を中心とした人間関係のことです。私たちは人間だけを愛するのではなく、人間だけに腹を立てるわけではありません。尊敬する人はすでに死んでいるかもしれないし、会ったこともない人に同情したりもします。その意味において、世界中の有形無形のすべてが「人間」かも知れません。人間関係を説明するとき「この人、その人、あの人」という言葉を使いますが、これらを客観的に説明するのは難しいことです。「距離の違い」という人もいますが、知り合いの「その人」が知らない「あの人」より近くにいるとは限りません。私の「これ」は、あなたから見ると「それ」になる・・・これが人間の世界です。

 

「なぜ」は「理由と目的」のことですから、まずは「だれの理由」、「だれの目的」なのかを考えます。「だれの」の「の」は「所有」を意味する言葉ですから、「だれ」とは理由や目的の持ち主のこと。それはあなた自身とは限りません。例えば、美しくなりたいという願いを叶えたいとき、そう願っているのはあなただけではありません。もしもあなた以外の人が願っているとしたら、それをあなたはどうやって知るのでしょう。「その人」から聞いて知るのか、「あの人」はきっとそうだろうとあなた自身が想像するのかのどちらかです。「その人」とは「相手」のこと、「あの人」とは「みんな」のこと、つまり「だれ(who)」とは「自分、相手、みんな」の3種類に分類できます。自分はもちろん自分自身のことなので、相手とみんなの違いをもう少し説明します。相手とは自分が直接関わる人のこと、私から見た「あなた」のことです。一方「みんな」とは、自分とあなたを含めた全員のことで、その大多数は直接関わることのない人たちです。例えば「若い人」は「年齢の低いみんな」のことで、通常何かの条件で絞り込んだ人たちを「みんな」と呼び、究極のみんなは「全人類」などと言ったりします。つまり、この分類は「自分との関わり」で分ける方法で、文法で習った「人称」にあたります。

 

理由は否定し離れたい動機であり、目的は肯定し近づきたい願いです。理由と目的を持たない人が、何かをやりたいと思うはずがありません。しかし、何かをやりたいと願っても、だれもができるわけではありません。そこには「あなたの願いを叶えてあげよう」という人や「みんなの願いを叶えよう」という人もいるはずです。ですから「なぜの持ち主」を明確にしたのは、その実現に挑むあなた自身が「誰の願いを叶えようとしているのか」を明確にするためです。例えば「困りごとを解決したい」という「なぜ」であれば、「困っているのは誰なのか」を特定する必要があります。それは自分かも知れないし、誰か他の人かもしれません。また、相手が困っているのを自分が解決したいのか、自分が困っているのを相手に解決してもらいたいのかもしれません。ここで注意しなければならないことは、方法は必ず自分の側から見ることです。「なぜの持ち主」は自在に選ぶ(設定する)ことができますが、「どうやって」と考えるのは自分に決まっています。考えてみれば、「自分がやりたいこと」なのですから当然ですよね。

 

「なぜの持ち主」が明確になれば、次に「方法のだれ」を考えます。方法とは、「自分が誰かに何かをする」ことなので、「方法のだれ」は「方法の対象」です。対象が変われば同じ行為でも意味が変わります。例えば「教える」という行為は「自分に教える」のなら訓練や修行、「あなたに教える」のなら説明や体験、「みんなに教える」のなら宣伝や公開といった具合に、対象を具体化することで方法も具体化してきます。もしも、具体的にイメージできた方法に違和感を感じるようであれば、「だれ」を疑います。自分のやりたいことが宣伝でなく説明だとすれば、それは「顔の見えないみんな」でなく「顔の見えるあなた」を対象としているのかもしれません。そして一人ずつ理解してくれたあなたたちが、やがてみんなに伝えてくれることを願っているのかもしれません。「違和感」こそが大事な手掛かりです。こうして、「なぜ」と「どうやって」を行き来しながら次第に「やりたいこと」を具体化していきます。

 

余談ですが、「売って欲しい」という願いを叶える方法は「売ってあげる」なのに対し、「買って欲しい」という願いを叶える方法は「買ってあげる」となりますね。どちらが高く売れるかと言えば、明らかに「売ってあげる」の方で、「買ってあげる」ではきっと値切られてしまいます。仕入れるときは「買ってあげる」、販売するときは「売ってあげる」となりたいものですね。

 

■課題

45文字で書いたあなたの「なぜ(理由と目的)」が、だれの思いか考えてみよう。

45文字で書いたあなたの「どうやって(how)」を、「自分が誰に何をする」という文にしてみよう。

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