言葉の壁をぶっ壊そう

僕の活動基盤である日本土地資源協会は、笑恵館の永続的な運営を担うために設立した法人だ。

オーナーから土地建物の寄贈を受け、社団法人という株主のいない法人が所有することで、相続による分割や税負担を永久に回避する。

オーナー自身もこの協会の理事なので、ある意味では自分の財産であり続けると言える。

子どもたちは土地建物の相続を受けられないが、むしろ、子どもたちに負担をかけることなく、やる気のある者が継承できる仕組みだ。

僕は、使われない財産として土地建物が余り続ける社会を変えるため、このやり方にたどり着いた。

だが、ここにたどり着くまでに7年もかかり、今後も僕は手こずるだろうと確信する。

そんな覚悟をしてまでこれから僕が挑むのは、「言葉」という障壁だ。

これまで幾度となく述べてきたとおり、僕は初めに「公益法人」を目指した。

法人は不死身なので、自然人を対象とする相続とは関係ない。

あとは、法人に所有権を移す際の様々な税負担を可能な限り回避するために、「寄付」の制度に着目した。

僕が過剰なまでに税負担にこだわるのは、「土地を売らない事業」だからだ。

そもそも税金は、土地の売却益にかかるものなので。売らない土地に課税するのはおかしいと思う。

その逆に、土地を所有するからには、国に対する賃料のような固定資産税は必ず払うべきだと思うので、行政に対しては社会福祉施設の民営化を提唱する。

僕は「土地を売らずに活用し、固定資産税をきちんと払うこと」こそが、これからの公益だと考えた。

だが、そんな思いは「公益」という言葉の壁に、あっさりと跳ね返された。

「公益の公」は「公私の公」、つまり、「私益」を目指す事業は公益事業とは言えないという。

確かに僕は、一部の役員が配分するために利益を残すのでなく、事業に関わる多くの人のために全てを使い切る事業を非営利と理解した。

だが、内閣府の言う「公」とはあくまで不特定多数を示しており、笑恵館は所詮「会員制の共益事業」に過ぎないという。

そこで僕は頭に来て、「日本政府だって、日本国民という会員を優遇する共益団体じゃないか!」と反論したが、「そんな意見は国会で言ってください」と笑われた。

僕は、公益申請を取り下げた。

次に僕が挑んだのはNPO法人を設立し、税務上公益法人と同等の取り扱いを受ける「認定NPO法人」を目指すことだった。

3年目を迎えた笑恵館では、会員数が500名を超え、「認定NPO法人」となる要件を十分に満たせるようになっていた。

だが、書類審査が終わった段階で都庁の担当者に「土地の寄付も免税となるか?」と尋ねたところ、「それは税務署で確認してください」とのこと。

これであとは、税務署に相談するしかなくなったのだが、もしもそこで否認されたら僕の努力は無駄に終わる。

だが昨年、ようやく覚悟を決めて税務署を訪ねてみたら、なんと税務署が僕の勘違いを教えてくれた。

なんとそれは、「土地はお金じゃありませんよ」という、僕の得意なセリフだった。

税務署員との会話

僕:なぜ土地の寄付は公益法人でも免税と限らないんですか?

税:お金は使えば無くなりますが、土地は無くなりませんから、はじめは公益利用していても次第に私的利用されるかもしれない。

僕:それでは「土地の公益性」は、説明できないじゃないですか?

税:そうです、公益性は免税の必要条件であり、十分条件ではありません。そもそも「利益」という言葉が間違いを招くんです。税金はお金にかけるモノ、だから税務上は”利益”でなく”剰余金”というんですよ。

僕:ガーン(壁が崩れる音)、では「公益」でなく「非営利」であることが、免税の決め手なんですか?

税:その通りです。営利型の社団法人には、たとえ株主がいなくとも、代表者に相続税がかかります。法人だからでなく、非営利だから・・・つまり剰余金が無いから税金を取らないんです。

僕:ガーーン(壁が崩れる音)、では非営利型社団法人であれば、相続や贈与税は免税ですか?

税:その通り、公益性が問われるのは「贈与する側にかかる税金」であって、それはいかなる団体も税務署長の許可が必要です。

僕:ガーーーン

結局僕は、自分自身も言葉の壁に囲まれて、それを乗り越えられずにいたわけだ。

考えてみれば、非営利法人というとNPO(NonProfit Organization)という言葉が多用されるが、Organizationは団体や組織を意味する言葉で「法人」ではなく、法人化した組織を「NPO法人」と呼んでいる。

1990年から行われたジョンズ・ホプキンズ大学国際比較研究プロジェクトで定義されたNPOの要件とは・・・

(1)正式の組織(Formal Organization)であること

(2)非政府組織であること(Non-Political)

(3)利益を配分しないこと(Non-Profit Distributing)

(4)自己統治(Self-Governing)

(5)自発的であること(Voluntary)

であり、何のための組織なのかを規定するものではない。

僕が目指すのは「永続性を妨げる相続や売買の排除と税の免除」だ。

固定資産税は、社会の継続運営のために必要だが、相続税や贈与税はむしろ土地の分割や売却を促進する。

この事に気付いたのは「土地はお金じゃない」という税務署員の一言だった。

そこで僕は、税務署で教わった「非営利法人」を、「公益法人」や「NPO法人」と区別するするために【NPC(Non-Profit Corporation)】を提唱する。

具体的に言うと、「非営利型の一般社団法人」のことで、公益法人やNPO法人となるためには、別の要件を満たさなければならないが、【NPC】は税法さえ順守すれば、あとは何の審査も無く自由に設立することができる。

もしも家族や仲間と共に、長く続く町や村をつくるため、土地や建物を分割・売却せずにそのまま継承したいと願うなら、誰でも作れる【NPC】の設立をお勧めする。

「NPCで行こう!」って、やっと僕のコピーができた気がする。