名車と誇り

僕は昔から「車は中古車」と決めていて、50万円以上の車は買わないことにしている。

近年は、ヤフオクで買うようになり、1982年型のスズキ・ジムニー(12万円)にしばらく乗った。

僕の自宅は横浜線の十日市場が最寄りの駅なので、世田谷ものづくり学校の三軒茶屋やの駒沢などは田園都市線利用で電車通勤した。

だが、拠点をに移したためJRと小田急線の乗り継ぎ通勤となり、次第に日常の電車利用が嫌になったので、原付バイクを使い始めたが、これは20キロを超える長距離通勤となると頻繁に給油もせねばならず、どうしたものかと困っていた。

そして僕が辿り着いたのが、「ホンダ・スーパーカブ」だった。

いきなりだけど、今日はこのスーパーカブと付き合った4年半を、データと共に振り返る。

世田谷区内の各所に出向くには、いずれにしても電車は不便なので、駒沢に置いたバイクを使っていた。

2014年の4月から、僕は駒沢を引き払って笑恵館に拠点を移したが、はじめは駒沢まで電車で来て、そこから原付バイクで笑恵館に通った。

原付バイクの燃費は約30キロで、満タンで約3リットル給油できるので、90キロ走るごとにガソリンスタンドに行くことになる。

自宅から笑恵館まで22キロだから往復44キロとなり、2回往復するごとに給油しなければならない。

ところがカブの燃費は約60キロで、3.5リットル給油できるので、200キロは走れることになる。

それならほぼ5往復・つまり週に1回給油すればいいので、僕はカブに乗り換えることにした。

購入方法はもちろんヤフオクだが、型式や予算などの条件をあらかじめ決めないと、落札は難しい。

とりあえず予算は「5万円」と決めたのだが、できればメイドインジャパン(日本製)を購入したい。

調べてみると、ホンダは1996年からカブを海外生産に移行したらしいので、1995年以前のモデルを狙おうと決めた。

あまり遠隔地の出品は引き取りに行くのが大変なので、東京・神奈川に絞り込み、ヤフオクで出品を検索し、順次5万円で応札した。

そして2014年の8月14日、ついに近所の町田市からの出品を3.5万円で落札し、僕はバスに乗ってバイクを引き取りに行った。

それから約4年半、走行距離と燃料、維持費を記録したので、その総括を報告したい。

 

まず走行距離は、購入時「56,490㎞」現在「93,100㎞」なので、「35,803km」となる。

これに対し、給油量は「617.49リットル」なので、リットル当たりの走行距離は「58.02km」で、60キロには届かなかった。

燃料代の総額は「82,350円」だったので、給油量で割ると「133円/リットル」となる。

ちなみにガソリン価格は、2016年2月の101円/lが最低で、2014年9月の172円/lが最高だった。

ガソリンには、ガソリン税(本則税率)が28.7円/l、ガソリン税(暫定税率)が25.1円/l、石油税が2.54円/lに加え、消費税が全体の8%かかっているので、150円/lの場合で68円/lの税金がかかっている。

だから、この最低・最高価格から68円を引くと、33円と104円となり、ガソリン価格はわずか1年半で3倍の乱高下したことになる。

次はお金の話だが、僕はカブに乗った分の交通費を電車賃と比較している。

この間の交通費総額はなんと893,550円で、4年と5か月で割ると「16,859円/月」となる。

同様に、ガソリン代を53ヵ月で割れば「1,553円」なので、電車賃の1割以下で移動できたことになる。

もちろん実際には、ヘルメットや防寒具、オイルや修理の費用が18万円ほどかかったので、それが「3,400円/月」となるが、それでも月ごとの利益は「13,500円」となるわけだ。

雨が降っても嵐が来ても、僕がカブに乗り続けることは、常に周囲の人たちから奇異の目で見られてきた。

特に、自宅のご近所からは「変なおじさん」とレッテルを張られていると思う。

でも、こうした小さな儲けが、僕のやる気を掻き立てたのは間違いない。

我ながら「本物のケチ」だと痛感する。

だが、これまで3回パンクし、速度計の前輪ギヤとチェーンは交換し、バッテリーも3代目ヘッドランプ以外の玉切れが頻発するようになってきた。

そこで、先日ネットで中古バイクを検索し、多摩センター近くのお店に行ってきた。

中古車に関する情報の整備が進んだので、もうヤフオクで競り落とす煩わしさから解放されたいと思った。

そして、2008年型のカブを購入し、2月中旬の納車を待つこととなった。

6万円の車体を3万で整備し、1.5万でタイヤ交換するので、購入価格は10.5万円だ。

これまでの実績から8か月で元が取れると判っている、すがすがしい買い物だった。

今日この話をしているのは、今乗っているカブの処分についてのお知らせだ。

幾らオンボロとはいえ、今日も元気にバリバリ走っている。

いつもなら、「だれか欲しい人に譲ります」と言いたいところだ。

でも今回は、バイクショップに引き取ってもらい、処分したいと思っている。

オンボロ好きの僕だから乗りこなしてきたけれど、誰もがこれを引き継げるという訳ではない。

3.5万で勝ったバイクなので、もちろんタダで譲ってもいいけど、今回だけはやめておこうと思う。

というわけで、僕が新しい (と言っても古い) バイクに乗っても、「前のバイクはどうしたんですか?」とは言わないで欲しい。

たったの9万3千キロだけど、「よく走ったね」と褒めてあげたい。

「1995年に日本で製造された世界の名車」に乗れたことを、僕は本当に誇りに思う。