1.ビジネスと社会

まちづくりはビジネス作り

先日FBで「ドイツにはまちづくりという言葉がない」というリンク記事を見て愕然とした。歴史的にも地方分権型のドイツでは、規模は10万人前後の地方都市が独自の都市計画を実施している。その取り組みは行政主導で、これに市民が積極参加するのだという。一方で、「まち」という言葉は「都市」でなく「コミュニティ」を意味しており、「まちづくり」は市民の取り組みでそれを行政がサポートするという訳だ。でも実態はその逆で、市民主導のまちづくりなど滅多に行われていない。いずこのまちも、国が決めた政策の実現のため、助成金をちらつかせながら市民を誘導しているに過ぎない。「まちづくり」が日本独自の言葉なら、そんな無駄なことをしているのは日本だけということなのだろうか。

 

僕は、「まち」を曖昧な「コミュニティ」などと定義せず、「ビジネスの仕組み」と考えたら面白いと思う。地域独自のローカルビジネスそのものがまちの仕組みであり、それが活力を生み、生活を支え、人を呼ぶ魅力となるべきだと。現に、日本の観光と言えば、きれいな景色と美味しい料理、そして丁寧なおもてなしと言うが、それは一部の賓客を迎えるときの話に過ぎない。観光の主体は、我々一般の市民が他所を訪ね、新たな発見や出会いを楽しむこと。だから、大切なことは「地域らしさ」であり、「他所との違い」なのだと思う。ヨーロッパの地方都市がいずこも美しく魅力的なのは、そこの暮らしから地域性や歴史が感じられるからであり、それが活力や仕事になっているからだ。そこには土産物屋や観光施設など必要ない。地域そのものが観光資源なのだから。そんなビジネスを生み出したいと僕はいつも考える。今日は、そんな事例をいくつか紹介したい。

 

N大生たちと始めた「法人ごっこ」は、何度か営業会議を繰り返すうちに各自の商材が出そろってきた。そこで今度は、それらを並べて売る仕組みを考える番だ。商材を絞り込んでその魅力を発信し、広範囲での販売を目指すのか、多岐にわたる商材を一堂に並べてより多くの人の関心を集め、小さなエリアで化学反応を起こすのか。まずは後者から始め、支持を集めた商材を順次発信していけばいい。だが、いきなり店舗を持つのは金がかかるし、商材もこれから育てるものばかり。ならば、「塾・学校の形式」にして、自分たちも学びながらビジネスを育て、販売したらどうだろう。そして、そのキャンパスとして、まちを使ったらどうだろう。そもそもこの話は、笑恵館近所の「さくまさんち」が発端だ。月に一度の住み開きで、何をやるのか模索するうち、大学生との交流が始まった。だったら、「さくまさんち」で「まちの学校」を始めよう。そして、少しずつキャンパスを広げ、「大学のまち」を目指そうということになってきた。

 

先日二人の子育てママが、笑恵館の見学にやってきた。現在子供を通わせている幼稚園が、園舎を持たない野外保育を20年以上続けていて、素晴らしい先生のお世話になっているのだが、時々行う屋内活動の場所がなく、公共施設や集会所をさまよっているとのこと。恒常的に場所を使わせてくれるような人を探すにはどうしたらいいかという相談だ。僕は以前、雪の中で活動するスウェーデンの野外幼稚園をテレビで見たのを思い出し、日本でもそんな活動があるのかと驚いたが、実情は野外保育を目指したのではなく園舎を見つけられずに20年が経ってしまったとのこと。高齢化してきた先生のためにも、父兄たちが行動を起こしたいという。そこで僕は、この活動は地域の人たちに知られているのか、そして困りごとを発信しているのかと尋ねると、年に一度バザーの献品のために地域の全所帯にチラシを撒いているが、そんなことは書いたことがないという。だったらまず、野外保育のすばらしさと今の困りごとをチラシに書いて、地域に知らせることから始めなさいとアドバイスした。「それなら、来月早速できるじゃない!」と、二人は元気に帰っていった。

 

ビジネスには、必ず強みと弱みがある。強みを発揮し弱みを克服できないとビジネスの実現はおぼつかないが、それを自分だけの力で解決しなければならないと多くの人が思い込んでいる。ビジネスで得をするのは自分だけなので、メリットの無い人になど相談するのは申し訳ないから、相談相手は利息で儲ける銀行や、指導料で儲けるコンサルばかりになりがちだ。しかしこれでは、地域の特性や独自性などあるはずない。地域社会に困りごとをぶちまけ、協力を得ることこそが、地域ビジネスを生み出す道だと僕は思う。そのためには、地域のメリットも提示しなければ相手にされない。しかし、自分のやりたいビジネスが地域社会にメリットをもたらすかどうかは、一体どうすれば判るのか。

 

答えは簡単、とにかく地域の人々に語り掛けるだけのこと。それは身近な人でも、通りすがりの人でも、誰でも構わない。誰か一人でも「素晴らしい」と言ってくれたらやる価値があると僕は思う。いきなり社会の大多数とか、過半数の賛同を集める必要はない。ただ、いつか将来は社会の大多数の賛同を得ることが必要だし、その時こそ、そのビジネスが「まちの魅力」になるときだと思う。だが、今現在地域から助けてもらうためにやるべきことは、「それを目指すこと」で十分だ。自分自身が素晴らしいと思うことを、「あなたもそう思いませんか」と問うことが大切だと僕は思う。だから僕は、あなたの「素晴らしい」を社会に伝える手伝いをしたい。僕の起業支援って、そんなことかも知れない。