個人事業と法人ごっこ

笑恵館の近くにある日大商学部の学生が、近ごろ頻繁に遊びに来てくれるようになりました。

彼らはまだ2年生ですが、商学部ということで、ビジネスには興味津々で、僕の話をいつも目を輝かせて聞いてくれます。

そこで昨日、中心人物のH君に「みんなで一緒に法人ごっこをやろう」と提案しました。

「法人ごっこ」とは、法人化を想定しつつ、法人を作らずにビジネスをすること。

ビジネスとは会社や団体などの法人を作ることではありませんが、ビジネスを永続可能な仕組みにするためには、その主体者が「法人(不死身)」になることは重要です。

僕がやりたいのは、ビジネスをお試しにやる「ビジネスごっこ」でなく、ビジネスにマジチャレンジする「法人ごっこ」ではないかと気づきました。

起業に挑むあなたにお勧めするため、今日は詳しくお話ししたいと思います。

まずビジネスは営利型と非営利型の2種類に分類できます。

「営利」とはビジネスが「剰余金(余り)」を生み出すことで、そのビジネスの所有者が儲かる仕組みです。

だから、「営利型ビジネス」は所有し続けるのか将来売却するのかで、ビジョンの描き方が変わってきます。

所有し続けるのであれば、財産としての承継ができるようにしなければならないし、売却するのであれば企業価値を高めるシナリオが必要です。

一方、非営利型のビジネスは「剰余金」を生み出さず、翌年度の事業に繰り越して再投資します。

事業の所有権は究極的には公共に帰属するため、将来解散する際の残余財産も配分せず他の公益事業に寄付をします。

事業の持続・発展を実現させながら、受益者を増やし、従事者の雇用を創出します。

世界のビジネスは今、営利型中心から非営利型へとゆっくりシフトしているように思います。

「法人ごっこ」では、営利型、非営利型のどちらでも体験できます。

営利型であれば、個人のビジネスに会社のような屋号をつけることで、「個人所有の営利ビジネス」を行う個人事業者になり、非営利型であれば任意団体(法人でないNPO)を設立し、実態として非営利型法人と同様の事業運営を行います。

いずれの場合も法人ではないので、法人税は発生せず税務申告は必要ありませんが、もちろん正規の経理処理を行い、報酬などの所得税を個人レベルで納税することが前提です。

事業収支と個人の確定申告処理を行うことで、税務・会計の全体像を理解することができるでしょう。

また、営利事業と非営利事業の入れ替えや同時進行も自由にできるので、自分の事業が営利型なのか非営利型なのかを、実際にやりながら判断することもできます。

このように、初めから形式を決めつけず、自分のビジネスにふさわしいやり方を模索することがとても大切です。

社会の、そして会社の在り方が大きく変化する時代だからこそ、なおさらだと僕は思います。

そもそも、「営利・非営利」のいずれかを選択すること自体すでに古い発想法であり、これからは、必要に応じて「営利・非営利」を使い分けるべきだと僕は思います。

利潤が少なくても永続型のビジネスは、それを持続させる仕組みづくりが大切だし、利潤が大きいが長続きしそうにないビジネスは、むしろそれを必要とする企業や団体に売却した方がさらに生かしてもらえるのかもしれません。

またこれからは、大きな組織や会社に依存することの安心感自体が揺らいできます。

老後の社会保障もあてにならないし、預金の価値も怪しいし、つまり、我々にとって本当の安定とは、「年をとっても収入を生み続ける生き方」ではないでしょうか。

少なくとも、1つの方法で絶対安心と考えず、様々な手立てを複数並行して確保することが必要なのではないかと僕は思います。

例えば、大企業で働く人も、自分の趣味や興味を活かした活動を少しずつ事業化して個人のビジネスを育てるとか、都会で暮らす人が少しずつ都会への依存度を減らし田舎の生活にシフトするとか、一人で仕事をしている人が少しずつ仲間と仕事を分け合うようになっていくとか。

新たなチャレンジは、リスク分散と可能性模索の両立をもたらしてくれるはずです。

「法人ごっこ」に必要なことは、「規約づくり」と「財務の確立」です。

「規約」とは、事業の「屋号(名前)」と「目的」と「方法」に関するオリジナル部分と、組織や機構に関する形式部分から成り立ちますが、後半の形式については後でゆっくり考えればいいでしょう。

まずは、あなたのやりたいことをリストアップし、それを「事業目的」と「事業内容」に分類します。

ビジネスの出発点とは「何をやりたいのか」を文章にすることです。(この部分を学ぶのが「まつむら塾」なので、興味があれば問い合わせてください。)

そして、やりたいことに関係するお金の動きをすべて書き出すこと・・・それが「財務の確立」の第一歩となります。

初めは出ていくお金ばかりで大赤字かも知れませんが、あなたの現状をお金で説明してください。

余談ですが、僕はしばしば女性に「女優やモデル」として起業を勧めます。

それは、多くの女性がファッションや美容にお金をかけているからです。

どうせそんなにお金をかけるのなら、その投資を活かすビジネスをやればいい。

そんな女性が「モデル」を目指すなら、衣服代もエステ代もすべて経費で処理できます。

あとは、モデルの求人に応募したり、自ら売り込みに行けばいい。

それがモデルというビジネスで、その結果仕事がたくさんできて儲かるか、なかなか仕事に出会えず儲からないかは、次の話です。

もしも美味しいレストランに通いブログを書くのが趣味ならば、料理評論家として起業すべきだと僕は思います。

そうすれば、飲食費などはすべて取材費となり、ブログを書くのが仕事となる訳です。

あなたのお金の使い道を、無駄遣いと考えるか先行投資と考えるか、それが分かれ道です。

ひょっとしてあなたはすでに、起業しているのかもしれませんよ。

そんなわけで、「あなたが何をしたいのか」と、「あなたがお金をどう使っているのか」から、あなたのビジネスを組み立てていくのが、松村流の「法人ごっこ」です。

あなたが自分で決めている趣味と仕事の境目や、友達と顧客の分類が、僕の目からどう見えるのかを是非ともお話ししたいと思います。

「ワークライフバランス」という言葉は、しょせん企業で雇用されている人の話であって、自分独自の事業と人生を自分自身で作る人にとっては、「ワーク=ライフ」です。

「雇われない生き方」というよりは、「自分で自分を雇う生き方」を目指すあなたに、是非ともこの方法を伝授したいと思います。

そしてもう一つ大事なことは、すでに経営している企業や団体でも、同じことがいえるということです。

定款や規約に掲げたことや、会社案内やパンフレットに記載していることと、実際にやっていることは、本当に同じものを目指しているのでしょうか。

営利企業のくせに全然儲からなかったり、非営利団体のくせに利益を求めたり、していませんか。

もしもせっかく社会に貢献しているのに売り上げや利益につながらないのなら、むしろその貢献をきちんとアピールし、非営利の収益を地域社会に求めるべきですし、本当は儲かりそうなのに非営利事業に縛られているならば、収益事業部分を分離して、きちんと営利を追求すべきかもしれません。

つまり、「法人ごっこ」とは、既存の法人が自らの在り方を見直す手段でもあると僕は思います。

ビジネスの初心者でも、ベテランでも、あなたからのご意見やご質問をお待ちしています。