景気=景色+雰囲気

いきなりですが、こんな記事を見つけました。

景気(けいき)とは、売買や取引などの経済活動全般の動向のこと。日本語における「景気」という言葉は、中世に和歌の批評における余情意識を表現する用語として用いられており、景色・雰囲気などの意味合いを込めて使われてきた。(『方丈記』など)転じて評判や人気などの意味にも用いられる場合があった。経済用語としての「景気」にも実体経済の動向のみならず、これに伴った世間一般の社会的心理をも含めて捉えるケースも多く、英語などの他言語には正確に合致する単語はないと考えられている。(Wikipediaより引用)

つまり、「景気=景色+雰囲気」だということですが、あなたはどう思いますか。僕は、何と素晴らしい言葉だろうと感心したと同時に、絶望的な気分になりました。確かに経済用語としての「景気」が実体経済の動向のみならず、これに伴った世間一般の社会的心理をも含めて捉える言葉であり、かつ多言語には見られない独自の言葉であることは、世界に対して自慢できる日本文化のすばらしさだと確信します。しかし、その経済用語が「余情意識、評判や人気を表現する用語」と一緒ごたに使われていることに絶望感すら感じます。日銀が金融政策を決める指標と、居酒屋で酔っ払いがこぼす愚痴が、本当に同じ言葉で大丈夫なんでしょうか。

全国企業短期経済観測調査は、日本銀行が四半期ごとに公表している統計調査のことで、日銀短観とか短観という言葉でよく耳にしますが、海外でも”Tankan”で通じるそうです。その発表は、日本の経済状態を測る指標として国内外の市場関係者から注目を集め、株価や為替レートなどに大きな影響を及ぼすだけでなく、経済の現況と動向はもとより、中期的な構造把握の指標としても、重要な経済統計の1つとされています。全国にある資本金2000万円以上の民間企業約21万社の中から約1万社を抽出して、様々な項目に関してオンラインアンケートを行うのですが、その代表的な「業況判断」の場合、「質問:貴社の業況についてどのように判断しますか」に対し「回答:1、良い 2、さほど良くない 3、悪い」というアンケート形態で、業況判断指数は、このうち良いと答えた割合(%)から悪いと答えた割合(%)を引いて算定されます。あなたはこれ、どう思いますか。

実はこの調査、他の項目もこんな感じで、回答はすべて「良い」「さほどよくない」「悪い」の3択です。これを1万社集めるのだから、統計学的にも価値を持つ数字かも知れませんが、回答者の1万人が、どれほどの知見と知識を持ち、共通の基準で判断しているのかを考えると寒気がします。問題はこれに回答する担当者の中に、経済学のプロフェッショナルとただの酔っ払いのおじさんが混じっていて、その区別がつかないこと。「景気の良し悪し」を説明できる人がどれだけいるのか、僕は「景気」の定義すら聞いたことがありません。実は今回、それを調べようとしたら、冒頭のような記述をたくさん見つけてしまいました。「景気=景色+雰囲気」こそが、景気の定義だったのです。

小学生にでも答えられそうなこのアンケート調査結果が、日本の金融政策の根拠となり、金融市場の判断材料になり、日本の実態として理解されています。なぜそんなことがまかり通るのか、それは、経済がみんなのものだから、まさに「景色+雰囲気」だからかもしれません。昔は成功し財を成すのは大変なことでした。銀行も、証券会社もない時代は、財産は常に周囲から狙われていて、それを守り増やしていくには高度な能力が必要でした。しかし現在では、何の知識がなくとも財産は保護され、貧しい人たちを基準にした福祉社会では、財産を減らす方が難しいかもしれません。多くの人が、余った資金で遊び半分の投資をしています。景気とは、まさにそんな世界の「景色と雰囲気」なのではないでしょうか。

今の僕には、こんな遊びに付き合っている暇はありません。際限なく印刷されるお札という紙切れには、何の興味もありません。僕が求めているのはおいしい食事とステキな景色、楽しい仲間とワクワクする現実世界です。それを手に入れるには、どうしてもお金を使って誰かに手伝ってもらう必要があるでしょう。お金は、そのためだけに必要です。それらが手には入り、失う心配がなくなれば、お金に用はありません。おかねの居場所やその動きでなく、現実世界の「景色と雰囲気」にこそ、僕は興味津々です。使うためのお金を使わずに貯めこみ増やすのでなく、どんどん使って誰もがお金を稼げる世界を作りたいと思います。そして、経済用語の「景気」には、違う言葉をあてがってもらいたいと、切に願います。