壮大な読み違い

英国の国民は、EU離脱を選択した。

昨日はこのニュースが世界を駆け回り、株が売られ、円が上がった。

急激な円高、そして株価暴落はリーマンショックのそれを遥かに凌ぐという。

リーマンショックは、その後の世界に大きな変化をもたらしたことを考えると、今回の「英国EU離脱」はこれから起きる大変化の前兆かも知れない。

しかし、少し遠めに見れば、世界の変化とはそういうものだ。

もちろん世界は昨日変わったわけではなく、これから変化が始まるのだろう。

「変化はあの時始まった」・・・と僕らは後で振り返るに違いない。

その根拠は、昨日起きたことが世界中の大多数にとって意外な出来事だったからだ。

変化とは従来と違うことであり、それが始まる時僕らの想定や読みは外れる。

だから、この「壮大な読み違い」は来るべき大変化の端緒に過ぎないと思うと、僕は胸が高まる。

これから始まる大変化を、後から振り返って知るのでなく、今、実況生中継で、僕は楽しみたい。

大変化を読み解くヒントは、もちろん「読み違い」の中にある。

これまで当たり前のように読んできた世界の筋書きが、急に変化したからこそ、予想外の展開になったのだ。

そう考えると、今回は随所に読み違いがある。

最大の読み違いは、この国民投票を仕掛けたキャメロン首相の判断だ。

彼は絶対に負けないと読んだ(思った)からこそ、国民投票を仕掛けたはず。

確かにもう少し慎重に、もう少し周到にやっていれば、負けることはなかっただろう。

しかし結果として、すべてが裏目に出てしまったのだから、彼は即刻辞めるしかない。

そして次に読み違えたのは、キャメロン首相を信じた人たちだ。

恐らく大多数の人たちは、キャメロン首相が自ら言い出したのだから、余程自信があるのだろうと読んだ(思った)に違いない。

今朝のNHKで、女性アナウンサーが「なぜキャメロン首相の読み違いを、プロの人たちは見抜けなかったんですか?」と言うのを聞いて、僕も愕然とした。

僕自身、今回の結果を予感しつつも、絶対こうはならないだろうと考えていたし、みんなもそう考えるだろうと思っていた。

この変化を予見することはできなかったが、今改めて気づきたい・・・と僕は思う。

予見できなかったことを恥じる必要はないと僕は思う。

実際僕らには、未来を予見する能力などない。

しかし、現に起きた現実を正しく理解できるようにはなりたい。

その意味で、アナリストたちの存在価値は、僕の中で地に落ちた。

アナリストとは本来分析家のはずだが、多くの人たちから予想を求められるうちにすっかり予想屋になっている。

これは気象や災害も同じことで、予報や予知はこれまでのストーリー上でしか語られることはない。

彼らが読み違えるのは無理もないし、仮に今回のことを予知した人がいたとしても、次回も信じられるとは限らない。

むしろ、リスク対策とは、どちらかに山を張る(予想する)のでなく、両方に備えることだと確信した。

ましてや、今回は2者択一なので、当然両方に備えた人たちがいたはずだ。

この大騒ぎは、彼らの仕掛けに違いない・・・と、僕は読む。

大騒ぎの陰で、大儲けをしている頭のいい奴らや、表向きは困った顔をしている嘘つきが、大勢いるに違いない。

次に、現場では実際何が起きたのか。

ご存知の通り英国は4つの国からなる連合王国で、それぞれの国で結果はまるで異なっている。

アイルランドと分断されている形の北アイルランドと、英国からの分離独立を望むスコットランドが残留を支持し、ある意味で彼らを支配する側のイングランドが離脱を選び、イングランドの中のロンドン市だけが残留を望むという、

何とも皮肉な結末だ。

つまり、キャメロン首相の意図する残留を求めたのは、お膝元のロンドン市だけだった。

これをすべて合算し、52%となった離脱支持を「国民の総意」とするのは空しい。

日本の安保法制と同様で、これは「昨日の多数決結果」に過ぎず、早速次の政権が廃止してしまうかもしれない。

むしろ、地域別の結果や年代別の結果、さらには所得別、人種別と様々な切り口での結果が、何らかの原因を反映し、それが変化の火種となっている。

これらが噴出せずにいたこれまでの均衡が崩れたことそのものが、変化の引き金になるのだと僕は思う。

まさにキャメロン首相はパンドラの箱を開けてしまい、世界はその中身を垣間見てしまったのだ。

この読み違いは、これから各地に飛び火していくだろう。

離脱派がくすぶる諸国では、誰もがパンドラの箱を開けたがるだろう。

そして、地域や民族のエゴが噴き出すだろう。

だが僕は、それらを抑えるべきではないと思う。

移民の流入を拒む勢力とも、移民を生み出してでも居座ろうとする勢力とも、等しく戦う必要がある。

その手段として活用するのなら、「読み違い」は強力な武器となる。

かつてヒトラーが台頭したのも、「国民投票」と言う合法的などんでん返しだった。

北朝鮮では、いまだに国民の総意が作られ続けている。

だが、正しいと信じて突き進む人をだれも止めることはできない。

今はそれぞれが正しいと信じる道を進めだけ。

ドイツはEUの存続を優先し緊縮財政策を緩めることが無いように。

イギリスは離脱を希望しない地域まで道連れにしないように。

そして日本は、本当に自民党政治と決別したいなら、若者も投票所に行き野党候補に投票するように。

みんなの読みが狂うよう、頑張ろうじゃありませんか。