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建築の用心棒!

「用心棒」とは、護身のために身辺につけておく護衛、ボディーガードのことで、護身用の棍棒、または警棒を意味することもあります。言葉は物騒ですが、その意味はまさにズバリだと思うので、この言葉をサービス名にしてみました。「建築の用心棒」とは、まさに建築工事を発注する人が自分の身を守るためのボディーガードのこと。今日は、僕がこのサービスをやるようになったいきさつをお話します。

僕は大学を卒業後、まずは設計事務所に入り、建築家の弟子のような仕事をしました。仕事はとても面白かったのですが、建築主の意向を無視して自分の提案をごり押しする建築家の姿(当時の僕にはそう見えました)が嫌になり、4年で辞めて独立を目指しました。ちょうどそのころ、父の建設会社に行く機会があり、高崎正治というとんでもない建築家の図面を見て、こういう図面を施工する側の仕事も面白そうだなと思い、入社を決めました。それまで建築家を目指していた僕の友人たちが、商売敵でなく取引先になるわけですから、考えてみれば面白いことです。父の跡継ぎにだけはなりたくなかったのですが、そんなこだわりは簡単に吹き飛んでしまいました。

会社に入って最初に感じたことは、建築主が如何に貪欲でずるがしこいかということでした。法律違反は当たり前、質を上げ、価格を下げるためには手段を選びません。役所が石頭なのも、建築家が理想を語るのも、建築主が素人のくせにこんなに貪欲では無理も無いし、それらの帳尻を合わせ、全てのしりぬぐいをさせられる建設会社はぼんやりしてはいられない実情を知りました。そして、口汚く書いてしまいましたが、こうした駆け引きは当然のことであり、むしろ僕は納得して仕事に取り組むことができました。でもやがて、建築を取り巻く人たちの中で、特に建築主=顧客を守る必要を痛感する事件が続いて発生しました。

はじめは「シックハウス症候群」、建材に含まれる有害物質が引き起こす病気で新築病とも呼ばれました。当時、レイチェルカーソンの「沈黙の春」や、有吉佐和子の「複合汚染」などがベストセラーになり、安易に犯人を特定できない環境問題に警鐘が鳴らされ始めた頃でした。僕はこれをビジネスチャンスと考え、いち早く「健康マンション」を提唱・販売し、かなり話題になりましたが、実際に重症な方の対応をしているうちに自分までおかしくなってしまいました。そして分かったことは、被害者以外に、こうした問題に真剣に取り組む人が如何に少ないか。「現状」がいかに多くの人々のメリットの集積で、これを壊そうという人はいかに少ないかということです。

そして次の経験は「会社の倒産」です。破綻とは、関係者の誰かに迷惑をかけることが避けられない状態のことですが、実際にはほんの一部の人しか救済できず、ほとんどの関係者に迷惑をかける事態です。僕は、様々な関係者の内救うべき人は誰かと考えた時、それは発注者(顧客)だとすぐに気付きました。それは、発注者こそ唯一お金をくれる取引先であり、発注者こそ最大の被害者になるからです。そんな経験から、僕の心には「発注者保護」という信念が芽生えました。発注者(顧客)を守ることが、ビジネス全体を守ることだと。

こうした考え方は仕事の仕方に反映するものです。建設会社なのに設計監理を頼まれたり、入札に負けた「他社施工」の工事監理を頼まれたり、建築家とけんか別れした施主や、その逆の建築家から仕事を頼まれたりと、建設業界ではタブー視されそうな様々な形の相談を受け、それらを引き受けてきました。だから僕は、あえてこの仕事をやってみようと思います。同業者から恨まれ、役所から疎まれようと、徹底的に顧客の側に立ち、考えうる可能性とリスクをすべて開示しながらアドバイスする仕事です。

これまで多くの顧客は、プロに囲まれる素人でした。特に初めての時は知らないことばかり。どんなに親身になったとしても、資格が定める範囲の中でしかプロは動きません。だから僕は、「顧客の身になって=顧客として」振る舞います。資格者になり変わって資格を使うのではなく、事情を知りつくしたプロが、あえて素人として仕事をします。だから、一級建築士という資格を持ってはいますが、この仕事においては何の役にも立ちません。もはや建設業界にはしがらみのない、単なる「用心棒」になろうと思います。

あなたの周りで、これから住まいや建築を作る方がいたら、是非ともご紹介ください。

私のような者の存在を、教えてあげてください。