買わない、借りない使い方

「所有と賃貸 どちらが得か?」よく聞く話だ。
「所有の方が自由に使えるが、賃貸の方が簡単に引っ越せる」とか、「どちらも一長一短で、何を優先するかによって所有派と賃貸派に分かれる」など様々言われるが、本当の損得は判り切っている。
賃貸物件には所有者の利益が乗っていて、その分損に決まっている。
所有者は所有物件を人に貸して、自分は賃貸住宅で暮らすこともできる。
つまり、所有者は所有しながら賃貸生活も可能だが、賃貸生活者にはそれは無理だ。
こういう話は他にもあり、例えば「新築と中古、どちらが得か?」も似た話だ。
新築住宅は、買った次の日から中古住宅になってしまう。
もしもその時点で1割安くなるとすれば、新築はたった1日の違いで中古より割高な買い物をしていることになる。
しかし、人々が圧倒的な比率で新築住宅を買う原因は住宅ローンにある。
現に市場で売られる住宅の多くは中古住宅新築住宅を買うのは、新築の方が良いからではなく、新築を買うように誘導されているからだ。

このように、マーケットは「ビジネスの誘導」によって形成されている。
「損なのに得に見せること」はビジネスの常とう手段だ。
ビジネスに誘導されて価値観が生まれてしまうのなら、自分で誘導する自分の価値観を持ってもいいじゃないかというのが僕の意見だ。
それは、決して頭の中で妄想するような話ではない。
現に8割以上の人が新築住宅を購入する日本とは逆に、アメリカでは8割以上の人が中古住宅を購入し、新築住宅の購入者は2割以下だという。
中古住宅で住宅ローンを組めないのは、35年返済に見合う耐用年数が必要だとか、理屈は何とでも繕えるが、本当の目的は第2次世界大戦後の復興を果たすため、国民に借金をさせて都市を再生する戦略だったに違いない。


奇跡の成長を遂げた日本において、住宅ローンの果たした役割が極めて重要だったことは確かだが、成長が終わり人口が減っているのにまだ止まらないこのシステムこそが、空き家を生み出す元凶の一つであることもまた、確かなのだ。
住宅産業で生きる人たちが、その仕組みにしがみつくのはやむを得ないとしても、僕たち自身までもがそれにつき合う必要はない。
現に家は有り余り、まちは空家と空室であふれかえっている。
そこで僕たちは、買うのでも借りるのでもない第3のやり方=無料で土地使うことをやり始めた。
無料で土地を使うなど、できるはずがないとおっしゃるかもしれないが、それは案外簡単なことだった。
ズバリ、所有者になればいい。
所有者になるのに、お金を払って土地を買う必要はなく、むしろ、お金で土地を買うのは一番愚かなことかもしれない。

現に、ほとんどの土地は買ったのでなくもらったものだ。
明治になるまでは、武将が幕府から土地をもらっていた。
山や畑は、親から子へと譲られたし、戦後の農地解放では、から小作人たちが土地をもらった。
実際に、土地をお金で買った人は、よほどの借金をした事業家か、その事業家に土地を売った成金ぐらいだろう。
あとは先述の住宅ローンで購入し、その値上がり益で土地転がしをした人たちだ。
所有者から土地をもらうには、所有者の家族になればいい。
だからは「会員制のみんなの家」で、入会費500円を払えば、家族として家を自由に使うことができる。
を総有する人」を、僕は「家族」と定義する。

もっと簡単な方法は、所有者の希望をかなえること。
僕のやろうとしていることが、所有者の希望を叶えるのなら、所有者は喜んで僕にやらせてくれる。
所有者がやりたいことというのは、所有者の権利行使であると同時に、それならやらせてもらえる許可条件なのだ。
したがって、僕と同じことをやりたい所有者を見つければ、あるいは所有者に僕と同じことをやりたいと思わせれば、僕は所有者の代わりに、堂々とやりたいことができるわけだ。
だから、自分が何をしたいのかを語り、相手が何をしたいのかを知ることが本当に大切だ。
僕がこれから取り組むプロジェクトは、所有者の意思を受け、その実現のためだからこそ何でもできる。
これをきちんとやることができれば、無料で土地を使うのは、容易いことだ。

所有権とは、資源を自由に使う権利のこと。
この権利無くして、夢を叶えるのは難しい。
むしろ、「所有権=夢」と言った方がわかりやすいかもしれない。
「所有権=夢」を購入するのは愚かな行為だと言ったが、これを売却するのはさらに愚かなこと。
永遠に減ることのない貴重な資源を手放し、夢を諦める人に用はない。
そして、土地をもらってくれる人、使ってくれる人こそがであり、これを借りて賃料を払ってくれる人は顧客にすぎない。
もしも賃貸で貸すのなら、いかにして賃貸し続けるかが所有というビジネスだ。
所有業=売却せず所有者であり続けることの確立に、僕は挑んでいきたい。

2015年10月9日のプログを再掲しました(2023年6月11日)